yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

北方貴族鎮圧補助、補給路寸断作戦 その1

本編の前に。

まず、更新が大幅に遅延してしまい申し訳ありませんでした。

その理由と言いますか、言い訳と言いますか、ここ最近は忙しい時期が続きまして、

バイトが決まって大忙し、テスト期間で大忙し、モンストのユメ玉集めで大忙し。

一個余分ですって?

兎にも角にも、時間に余裕がありませんでした。そしてやっとこさテストも終わり、店長に一週間の休みを頂き、運極も3体とも作れました。

一個余分ですって?

今後も予定が空くか分からないので北方貴族鎮圧作戦は今の内に書き溜めしておきます。

数少ない読者様には謹んで謝罪いたします。本当にすいませんでした。

それでは本編をどうぞ。

 

 

 

 

 

『帝国』と呼ばれるこの世界の国家の、言わば首都となる都市、帝都アグニセスラータ。その北方では今、貴族による大規模な反乱が展開されていた。

貴族の反乱軍の主力部隊の規模はおよそ二千に対し、帝国から派遣されたのは帝国軍の二個師団。最小限の戦力故に、戦いは苛烈を極めた。

そんな反乱軍と帝国軍のホットラインから少し外れたある場所。名も無きその場所は真ん中に車が二台分通るぐらいの通路があり、その通路は反乱軍の唯一の物資補給路となっていた。その通路の右手左手には崖がそびえ立っている。

コホルスΣから派遣された団員達は、その崖の上で今まさに偵察を行っていた。

「位置についたか?」

諸事情により本作戦で全ての指揮系統の責任を負っているヴァルドは、一人で語りかけた。

ヴァルドの背後にはアシッドがいたが、どうやらヴァルドは彼に語りかけた訳ではないらしい。

『こっちは問題ないです』

ヴァルドの耳の穴に入り込んだ、超小型の無線機がヴァルドの耳小骨に直接語りかける。無線の相手はフリートだ。

「了解。双眼鏡を用意してくれ。敵が視認出来たら、即時報告を頼む」

『了解です』

通話を切ると同時にヴァルドはアシッドに双眼鏡の準備を促すが、いや、正確には促そうとしたが、アシッドは既に双眼鏡を首に下げていた。

「俺達も位置につくか」

「しょっぱなからバレないようにしないとねえ」

二人は一応、匍匐状態になりフリートからの通信を待った。

 

ここで一旦、状況を整理しよう。

ヴァルド達は介渡が算出した敵補給車の移動予測ルートに待機している。ヴァルドとアシッドのいる位置が地点Aとすると、フリート、グロウ、アランの三人は地点Aより少し道を遡った地点Bにいる。

地点Bにいるフリート達はトラックを視認次第すぐにヴァルド達に報告。そのまま追跡し、中継地に着き次第挟み撃ち。そういう算段だ。

二手に分かれているのは、急襲された際に一気に全滅するのを防ぐ為だ。

『敵車両を確認。これより追跡します』

フリート班が車両を確認するまでに時間はかからなかった。

「了解」

その報を聞いてすぐにヴァルド達も移動を開始した。

現在、ヴァルド班とフリート班で敵車両を挟んでいる状況である。

「しかしまあ、随分やる気があるみたいだねえ」

アシッドは嫌味ったらしい笑顔をヴァルドに向けた。

「まあ・・・な」

ヴァルドは特にムカつきもせず、ただただ神妙にそう答えた。アシッドのこの笑顔に特別悪い意味はない事は、彼との付き合いの長さから十分に理解している。と同時に、彼自身アシッドに強く言えないような思うところがあった。

 

前回の任務だ。

混沌の手によって起きた反乱。この反乱の時、コホルスΣ団員は初陣ながら目覚ましい活躍を遂げた。

アシッドは単騎で悪魔を一人破った。

グロウとアランは一度悪魔に敗れそうになりつつも、強い絆で持ちこたえこれを撃破する事に成功した。

マクロ・・・彼については特殊過ぎるため考えても仕方ないが、その圧倒的な実力で組織の混沌を除く最強戦力を圧倒した。

介渡に至っては、勝手に、いつの間に、知らぬ間に一人で混沌を打ち倒してしまった。

しかし、自分は。

ヴァルドは何も出来ていなかった。正確に言えば本人がそう思っているだけで、彼の指揮なければグロウ達の実力は機能していなかったし、彼がいなければ、彼に周りが奮い立たされなければマクロが来る前にフリートに全滅させられていたかもしれない。もしかしたら、介渡がどこからともなく助けに来たかもしれないが。

しかしそれを手柄と見る程、残念ながらヴァルドはさっぱりした奴では無かった。グロウも、アシッドも、介渡も、誰一人として彼の事は責めていない。しかしただ一人、ヴァルドという男だけは責め続けていた。

彼は謙虚だった。

謙虚過ぎた。

故に自信喪失になりかけた。

故に、この任務で挽回しようとする意気込みがあった。この任務にかける思いは誰よりも強かった。

 

「ヴァルド、君、顔が怖いよ?」

言われてヴァルドは我に返った。

「すまん。ちょっと考え事をな」

「前回の任務の事かい?考え過ぎだと思うけどな・・・」

「みんなそう言うよ。でも考え過ぎるぐらいが丁度良いさ」

「せめて空回りしないようにね」

「肝に銘じておこう」

ヴァルドは我に返ってもその強張った表情を崩さなかった。あの飄々としたアシッドもこの時ばかりは笑みも浮かべず戦友の顔をじっと見つめた。

二人の間には沈黙が流れた。

「・・・そうだ。向こうの様子を確認しておこうよ」

「そうだな。おい、フリート」

ヴァルドは無線をオンにし、片耳を押さえて話しかけた。

『〜〜〜〜〜〜、〜〜』

「ん?何て言ってるんだ?」

『〜?〜〜〜〜?』

ただの無線機の不調ではない、と瞬時にヴァルドは悟った。そもそも介渡が作った無線機に故障など有り得ないのもあったが、それよりも大きな要因が一つあった。

「何語を喋っているんだ・・・?」

それは、フリートの声自体ははっきり聞こえている、ということだ。ノイズは一切混じっていない。声が小さい訳ではない。ただ、「何を言ってるか分からない」のだ。兵士としてそれなりに長くやってきたヴァルドだが、このような事は初めて経験する事だった。

「どうしたんだいヴァルド?」

「・・・敵の妨害かもしれない。気を付けろ、アシッド」

「っ!?もう気付かれたのか!?」

「分からない・・・一先ずこちらに何も影響はない。俺は無線に注意するからアシッドは周囲を・・・っ!?」

「どうした!」

それは意味不明な言語に混じって無線から聞こえてきた。それは言葉ではないが、ヴァルド達軍人にとっては「敵が襲ってきた」という意味を持つ音だった。

「フリート達が襲われている!行くぞ!」

「っ!分かった!」

そう、銃声だった。