コホルスΣ小説
突如として鳴り響いた銃声。 それは作戦行動中の団員達の耳を劈き、焦燥感を与えるのには十分だった。 しかし、想定内の出来事でもあった。勿論いつでも敵の襲撃を予測しておくということは軍人として当たり前の事で、フリート達もそれは怠ってはいなかった…
本編の前に。 まず、更新が大幅に遅延してしまい申し訳ありませんでした。 その理由と言いますか、言い訳と言いますか、ここ最近は忙しい時期が続きまして、 バイトが決まって大忙し、テスト期間で大忙し、モンストのユメ玉集めで大忙し。 一個余分ですって…
コホルスΣの二階にある会議室。長机が長方形の形に組まれたこの部屋には、重苦しい空気が漂っていた。 「ではこれより、ミッションブリーフィングを開始する」 一番前の真ん中の席に座る支部長、八十島介渡が口を開けた。 「今回は帝国軍部から直々に二つ、…
「・・・といったところだ。大体分かったかな?」 介渡は手元に広げた資料をまとめ、目配せで確認を取った。 「そう言われても、これだけの情報を一気にだと・・・頭が追いつかないわよ」 アランが苦い表情を浮かべる。 「アランは全く管理職に向いてないか…
その建物は『三色の樹』の真下、帝都第四区の端の方に位置する。 第四区といえば高級住宅街が軒並み並んでいる、帝都の中で庶民が暮らせる最上級の地域だ。そんなビップエリアに介渡達は、帝国から手配された役人に導かれながら足を運んでいた。 何せ、かな…
介渡がヴァルド達の前に姿を現す、三十分前程。 「・・・」 介渡は既に混沌との戦闘を開始していた。周囲には瓦礫の山ができ、地面には亀裂や凸凹まで生まれていた。 介渡は無言で混沌に詰め寄る。その気迫は、その威圧は、これでもかと混沌の全身を貫いてい…
「いやー皆凄い頑張った。先生感動で涙が出ちゃうわ・・・・・・!」 あからさまな様子で目を擦り始める介渡。 「いや、え?いつからいたんだ?」 「いつって・・・そういやいつだったっけかねぇ?」 介渡はおどけていた。そんな態度に、アランが痺れを切ら…
悪魔は常に、人々に恐れられる存在であった。 それは悪魔が望み、生き甲斐とする事実だった。 悪魔は人々を陥れ、甘く囁き、破滅へと導くのを生業とした。 最も、聡い人間や運の良い人間はそれらを撃退する事もあった。 なので、悪魔と人間は常に対立してい…
「・・・は?」 フリートの目には困惑と、驚愕が入り混じっている。音速を超えてマクロに襲い掛かったフリートの体は一瞬にしてそれまでとは逆方向へ進んでいった。 いや、進んでいったでは語弊がある。フリートの体は逆方向へと、弾け飛んでいったのだ。 「…
・・・不気味な程の静寂。 不気味な程何も無い、暗闇。 ここは天国なのだろうか?いや、天国はもっと明るいイメージがある。するとここは・・・地獄か? 無理も無い。俺は色んな過ちを犯した。 人を殺した。人を殺させた。誰かが殺されるのを防げなかった。 …
場所は変わり、ここは敵拠点の某所。 狭い通路に佇む少年は、奥で仲間の救出に向かってる者達を邪魔させまいと、孤軍奮闘していた。 その状況、なんと一対五十余。絶望的かと思われたが・・・。 「な、なんだこいつ・・・っ!」 敵兵士が必死になって乱射す…
「・・・っ!!」 鬼気迫る表情。 まさにそんな感じだった。 「貴方は本当に面白い。倒れても倒れても立ち上がり、何かの為に命を賭し。本当に面白い人間だ」 「言ってろくそったれ!」 跳躍したヴァルドは一瞬でフリートに肉薄していた。 速い。自分ではお…
「お~い!」 唐突に声のした方向を振り向くと、そこにはアシッドがいた。 いや、アシッドともう一人いた。 「ミジェラグル!お前もやられちまったってのか!?」 そう呼ばれた縄で縛られた男、ミジェラグルは項垂れながらも頷いた。 「能力の特性を看破され…
「アラン、最初に言っておかなくちゃならねえ事がある」 「な、何・・・?」 「好きだ」 息を吐くように簡単に出たその言葉。 その言葉は、私の頬を沸騰させるのに十分過ぎた。 「・・・えっ!?ちょ、ど、どうしたのグロウ!!?」 「殺されかける直前で、…
「あっ・・・・・・」 少女の目の前で少年の肉体が力なく崩れ落ちる。 「いや・・・いやっ・・・!」 少女は何もすることが出来なかった。少なくとも、両目から水を滴らせる事しか出来なかった。 少年の体が、地べたにつく。砂埃が舞い、少女の潤んだ瞳に微…
「がああああ!!」 両手を地面に突き当てる。 床のコンクリートとその下にある土の間に酸を流し込み、床を沈下させ・・・。 「地盤を酸で溶かして足場を不安定にさせるのか?」 「っ!」 全て丸分かりってか。 なら地盤を溶かさずにそのまま留めさせ、それ…
「ぬぐおぉぉっっ!?」 ゲシュビルは宙を一転、二転としまともに受身もとれないまま地面に衝突する。 「アラン!」 その無防備な状態を見逃すわけにはいかない。俺の指示ですかさずアランの名を呼んだ。 「分かってる!」 アランは両の掌を地面にあてる。 …
「・・・」「・・・」「兄ちゃんと嬢ちゃんが俺の相手かい?」その悪魔は、無骨で不敵な笑みを浮かべて佇んでいた。一言で言えば、不気味だ。「俺の名前はゲシュビルってんだ。よろしくな」「・・・グロウだ」「アランよ」「そっかそっか」言葉だけなら、至…
「っ!」天井が崩れ、瓦礫の山ができ、辺り一帯に轟音が鳴り響き・・・。そう認識した時には既に遅かった。目にも留まらぬ速さで近付いてきた黒い影は隙だらけの俺の懐に入り込み、脇腹を突き上げた。体感で、およそ二秒。「・・・」我に返った時は既に吹き…
「走れ!」増援部隊を尻目に俺は叫んだ。取り敢えずアシッドは確保した。後はアランだけなのだが、介渡が言っていた増援部隊が俺達を逃すまいと追いかけてくる。「どうすんだヴァルド、キリがねえぞ!」グロウが焦りを顔に浮かべる。それは俺も同じだ。この…
「介渡!今何処にいるんだ!?」『だいぶ進んでしまったからなあ。恐らく混沌の部屋といったところか。まだ戦ってないけど』もうそこまで行ったのかよ。俺達を置いて卑怯な奴だ。『取り敢えず私も一旦戻ってみるよ。ったく、またあの敵兵の目を掻い潜らなけ…
「ここからは別行動だ」 暫く進んだところで唐突に介渡がそう言った。 「グロウ、マクロ、ヴァルドの三人は上から、アラン、アシッドの二人は地上から、それぞれお互いのチームをカバーしながら進んでいってくれ」 「あんたはどうすんだ?介渡」 「私は単独…
「伏せろ、皆」 介渡に言われるがままに地面に突っ伏す。冷え切った土の温度が体に伝わり、俺は身震いをした。 敵兵は三人・・・。見えてない所まで考慮すると八人はいるか? 徐に介渡が双眼鏡を取り出した。 「ふむ・・・八人か」 当たった。 「基本皆哨戒…
「・・・」 茂みに隠れ、息を殺す。今までやったことのない‘‘殺り方’’に、高揚感と不安感が募る。 俺はヴァルド。レギオンズΣ、帝国支部での指揮官兼参謀を担っている。 そして俺の隣にいるのが、レギオンズΣ支部長、八十島介渡。通称「ヒューマノイド」だ。…