東方修行僧 30
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「逃がすか!追えッ!追えッ!」
「くっ・・・」
逃げ続ける魔理沙に、敵の追手は容赦なく襲い掛かる。
「よし、掃射!」
鉛弾の嵐が魔理沙に浴びせられた。
魔理沙はなるべく狙いを一点に集中させまいと上下左右不規則に動き回る。
しかし、鉛弾のスピードは普段自分達が体感してる弾幕のスピードの比にならない。
「ぐっ!」
弾丸の一つが魔理沙の足に直撃した。
鮮血が飛び散ったと共に激痛が走り、魔理沙は森に落ちてしまった。
「落ちたぞ!身柄の確保を!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁっ・・・ぐっ!」
葉や枝などが落ちる衝撃を吸収し、魔理沙は間一髪生きていた。
しかし、兵士達に囲まれている。
「ふぅ、しぶてぇ小娘だったぜ」
一歩、また一歩と兵士達は魔理沙に近付く。
(助けて・・・死にたくない・・・助けて・・・)
魔理沙は心の中でそう繰り返すしかなかった。
「隊長、早く縛り・・・うっ!?」
「何だ!?」
魔理沙から一番遠い所にいた兵士が突然、意識を失い倒れた。近くにいた別の兵士がそれを支える。
「どうした!?」
「一体誰が!?」
動揺する兵士達。魔理沙には何が起きているのか全く分からなかった。
「居たぞ!きっとアイツがやったんだ!」
兵士の内一人が何かを指差しそういった。他の兵士達もそちらに振り向く。
「なっ!?」
「何故アイツがッ!?」
魔理沙の角度からは見えなかったが、兵士達はその‘‘何か’’に怯えていた。
「くそっ!やれっ!」
「・・・」
‘‘何か’’は何も言わなかった。ただ、まるでサッカー選手がリフティングをするような、まるで野球選手がキャッチボールをするような慣れた手付きでたった一人で何人もの兵士を簡単に気絶させていった。
全ての兵士が気絶し、‘‘何か’’は魔理沙に気付き、振り向いた。
「お、お前は・・・」
「「『夢想天生』!」って唱えてから一体どのくらい経つのよ!」
「だって今は別に弾幕ごっこ関係ないじゃない」
博麗霊夢はチート技、『夢想天生』を使ったまま解こうとしなかった。戦争の重大さを彼女なりに理解しているのだろう。
そして理解してる者がもう一人。
「数増やすのはチートだろ!」
と叫ぶ天邪鬼の前には本物の鬼、萃香がいた。
「一人でも百鬼夜行~」
萃香の前には戦力差は関係ない。何故なら彼女は能力により自身の分身を作ることが出来るからだ。
ここまでくると、輝針城組の扱いに疑問を覚えてくる。
もっと言ってしまえば、裏で隠れて霊夢達を狙う兵士達も可哀想だ。銃が当たらない&効かないからだ。
「・・・ていうのも計算の内なんだよね?幻想郷の中ではそれ程強くないのかどうか分からないが、それでも旧地獄組や命蓮寺組に比べると劣る輝針城組を霊夢達に向かわせたのは」
「あの二人は本当に厄介だ。本気を出されると我には手に負えない。だからこそ足止めをする必要があるのだ」
「そんなの分かるさ。でもどこまで持つかな?」
「そこの『駆け引き』を上手く収めるのが指揮官の仕事だ」
「二重の意味で、か。上手いね」
「・・・(捕まっているのというに、この余裕は一体どこから出てくるんだ・・・?)」