yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 1

「朝ごはんの用意が出来ましたよ」

私はゴトッと机に食事を置いた。コンコンと立ち上る湯気が料理の香りを運び、食欲をそそる。

「ありがとうございます」

ズズズッと、華扇は汁物を口にした。

「う~ん・・・普通の人よりは出来ますけど、一流までとはいかないようですね」

「そうですか~。頑張ったんですけどね~」

「でもおいしいですよ?特にほら、このお米」

華扇は何の変哲も無い真っ白なお米を指差した。

「特に良いお米は無かったはずですが、それでも最適な固さ、そして旨みは並ではないですね」

「そうですか?特にこれといったことはしてないですけど」

私はお茶を淹れ、華扇に差し出した。

「特別なことなんていらないんですよ。基礎がしっかり出来ていて、何も飾らないからおいしくなるんです」

「安心出来る味って感じですか?」

茶葉を棚に戻し、自分の分を取りに台所へ戻った。

「そういうことですね。これなら毎日食べられます」

華扇は魚をひとつまみし、口に運んだ。背筋がとても伸びていて食べているだけなのに人を惚れさせてしまいそうな上品さが・・・。

いけないいけないと首を振り自分の食事を置いて、静かに席に掛けた。

しかし改めて見ると我ながらしっかりと出来ているなと思った。

野菜は色を失わず青々しく輝き魚は適度な焼き加減で良い匂いだ。

さっき華扇に褒められた米にはツヤがあり、何と食べても、いや、そのままでもおいしいんじゃないかと思った。

レギオンズで他の団員には内緒で料理や雑務やらをたまに手伝った甲斐があった。

内緒というよりかはどうでもいいから話さなかったという感じだが。しかも入りたての頃だけだし。

「食べないのですか?」

はっとして華扇の方を見ると、お茶碗を左手に持ち、包帯で巻かれた右手で持った箸を咥えながらキョトンとしてる姿があった。

可愛い・・・4500年近く童貞で過ごしてきた自分には到底耐えられない。童貞だけに。

・・・私は色欲を悟られないように無表情のまま目を伏せ、野菜を摘んだ。

その姿を見て安心したのかニコッとして口にご飯を運ぶ華扇の姿が視界の端に映り、自分の何かがグラりと揺れ動いた。が、何とか無表情を保つ事は出来た。

これならばれていn・・・。

「今、私を見て何を考えましたか?」

ご飯を吐き出しそうになって、慌てて飲み込んだ。危ない危ない。

「今何で慌てて飲み込んだんですか?漫画みたいにご飯を吐き出しそうになったんですか?」

訂正。非常に危ない事態だ。

というよりもう遅い。完全に勘繰られた。

「どうせ変な事を想像したのでしょう?」

「いやいや、考えてなんかいませんよ!ただちょっと可愛いなって・・・」

「私じゃなければ、どこまでいってましたか?」

「え~っと・・・ハハハ・・・」

返答に困り、苦笑するしかなかった。

「はぁ。見かけの割にきちんとしていたから、少し期待してたんですけどね・・・。いいですか?貴方はそうやって欲をちゃんとコントロール出来ないから違う面でも直ぐに心が乱れてしまうのですよ?」

人間そういうのは仕方ないだろと思ったが、無論口に出すことはしなかった。

「全く、男はいつもこうちやほやして・・・褒められるのは嬉しい事ですが、そんなことでは全くもう・・・」

「あーすいません」

申し訳程度で謝っておいた。

「謝って終わらせようとしても無駄ですよ!貴方がそんな欲をもう持たないよう、今日からみっちり修行しますからね!」

欲を持たないように・・・か。いや、欲だけでいいのか?

「不満を言ったって無駄です。もう弟子になると言ったんですから師匠が決めた事にはしっかり着いて来て下さいね!」

欲だけコントロール出来るようになって果たしてそれで組織をまとめられるのか?

自分に問いただした結果は、否だった。

「全ての感情をコントロール出来るようになりたいです」

「・・・は?」

「欲だけなんて組織をまとめられる力になりません。どんなことがあっても動じない。いや、むしろわざとそんな感情になれるくらいに精神面を鍛え上げたいです」

「そんな大掛かりな・・・私一人じゃ力不足かもしれません・・・」

確かにそんなことをやってのける生き物なんてそうそういないだろう。

しかし、だ。

「たとえ教える側が実際に出来ない事でも、知識は有効活用出来る筈です」

「これはまた、傲慢な弟子が来たものです・・・さて、どうしましょうか」

「・・・」

「何事も経験と言いますし、やはりそういう経験を何度も繰り返すしかないですね。しかし・・・そうなると、私でもやりたくないことをやらなければなりませんね」

「なら、貴方を超えるだけです」

「・・・ふぅ。分かりましたよ。それに喜怒哀楽ぐらいは出来ますし。本当に我が儘な弟子ですね」

「はい!よろしくお願いします!」

こうして、一人の修行僧の物語は始まったのである。