yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

北方貴族鎮圧補助、補給路寸断作戦 その5

「敵襲ー!敵襲ー!」

「総員配置に・・・グハッ!」

「くそっ!隊長がやられた!」

激しい銃撃戦の中を、コホルスΣの団員達は麻酔銃片手に駆け抜けた。

「いいか、指揮官を集中しろ!指揮系統が失われれば連携も崩れ、俺達の負担が減るからなあ!」

「了解!」

団員達の連携は鮮やかだった。それぞれが速やかに適所へと移動し、それぞれが互いをカバーし合い、数で勝る相手を最小限の力で無力化していった。

そう、鮮やかな連携が取れていた。

「どうなってるんだアルメリオさん!」

「奴らあんなに連携を・・・うっ!」

『分からない・・・音は拾ってる!何で!?』

アルメリオが動揺してる間にも、団員達の十倍はいる兵士達は次々と倒れていく。

「奴ら混乱してるぜヴァルド」

「一人の能力に頼った戦い方をしてるんだ。それを崩されたら一溜りもないだろうさ」

「長所が唯の一つなのも欠点、てか」

「いや、まだ敵もいるしアイアスも控えてる。また気絶すんなよグロウ」

「分かってるって。それにしても便利だなこのミルってやつ」

グロウがその名前を呼ぶと、ミルはステルスモードを解除してグロウの目の前に現れた。目玉のうような大きなカメラが愛くるしくクルクルと動いている。

「こいつに翻訳機能があって助かったぜ」

その瞬間、グロウが発した言葉をミルが集音した。その言葉はグロウが意識したものとは全く違う言語であったが、即座にミルが修正。修正された言語のデータはヴァルドのミルに転送され、グロウの声でヴァルドの無線機へと発信される。

「普通に話してるのとタイムラグが無いってのも良いよな。カバー!」

「これもまた四千年の技術って事か。了解!」

悠長に話しながらも二人は射線を逃れる為に、グロウはしゃがみ、ヴァルドは跳んだ。そのまま二人は、お互いの背後にいた敵兵を素早く眠らせる。短い期間だが介渡の手解きを受けた団員達とそこらの者とでは雲泥の差があった。

とうとう敵兵は団員達の倍程度にまで減った。

「そろそろだ。集合!」

ヴァルドの合図とともに団員達は素早く一箇所に集まり、お互いの背後をカバーするように円形の陣をとった。

敵兵はこれを好機と見ていた。力の差があるとはいえ、まだまだ敵兵は団員達の倍の数程いる。それすなわち一箇所に集まった団員達を一気に叩く事が可能ということを意味していた。

「今だ!配置につけ!」

この瞬間を待っていたように兵士達は散開し、それぞれ団員達の頭部が狙えるポジションへとつく。雑兵とはいえそれなりの訓練を積んでいるのだろう。一瞬にして団員達に逃げ場は無くなった。

しかし団員達の表情には、まだ余裕があった。

「フリート君の頭あんなので撃ち抜けると思ってるのかねぇ?」

「まあ、無理だろうな」

「この動きが出来るんですからまだ素晴らしい方でしょう」

「流石優しいわねえヴァルド。アンタらも見習いなさいよ」

「みんな、そろそろ気を引き締めてこう」

ヴァルドの言葉を皮切りに、それぞれから声が消えた。

「撃てェッ!」

「来る!」

敵兵が引き金に指を引っ掛けたその瞬間だった。

「ドッカーーン!!ギャハハハハ!」

壁が崩れ落ちる音と下卑た笑いと共にアイアスが現れた。

その瓦礫と衝撃波で敵兵は吹き飛び、それまで団員達を睨んでいた包囲網は総崩れとなってしまった。

「あん?瓦礫と一緒にゴミが散ったようだな。邪魔だっつうの」

「仲間を気にするどころかゴミと侮蔑するとはな。あんた絶対人望無いだろ」

「そんなもん必要としてんのは群がらなきゃ生きていけないお前達のようなゴミぐらいだぜ。第一俺は人間でもねえしよ」

「自分以外殆どゴミなんだな、あんた」

「ゴミはしっかり掃除しねえとなあ」

そう言ってアイアスは能力を行使し、ヴァルドの背後へ回ろうとする。が、既に背後は他の団員がカバーに入っていて、とてもアイアスが瞬間移動出来るスペースなどなかった。

「お前いつからその陣形を・・・」

「どうせアイツらに任せられず途中で出てきちまったんだろ。お前みたいな単純な奴の現れるタイミングなんて簡単に分かんだよ」

「チッ・・・クソが。ゴミでも粗大ゴミぐらいには処理が面倒くさそうだぜ」

「ゴミしか煽り文句ないのか?妖怪の類ってのはもっと高尚な生き物の筈だったが、お前はただのボキャ貧か」

「ッ!!ナメんなよクソがッ!!!」

アイアスは怒り狂い、己の持てる全ての力を込め始めた。元々隆起していた筋肉が更に隆起し、身長も三メートル程に巨大化している。

「ガアアアアァァァァアア!!!」

もはや我を失っていると言っても過言では無かった。まだ人間らしかった以前の姿は完全に失われ、人間がよく知るガーゴイルの、更に荘厳な姿と成り果てた。

しかしその姿を前にしても、団員達は少しも怯んだりなどしていない。

「うっわ短気ね〜。マイダーリンの方がまだマシだわ」

「マシってなんだマシって!何であたかも僅差みたいな言い方してんだ!」

「ほら来るわよ。さっさと準備しなさーい」

「釈然としねえ・・・」

「夫婦喧嘩も微笑ましくてよろしいですが、油断は禁物ですよ?ちゃんとお願いしますね」

最後の談話を終えると、彼らは戦い以外の雑念をシャットアウトした。

「いくぞォォ!」

「ああ、リベンジマッチだ!」