yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

Mission Briefing 〜貴族鎮圧作戦&ヲ島防衛作戦〜

コホルスΣの二階にある会議室。長机が長方形の形に組まれたこの部屋には、重苦しい空気が漂っていた。

「ではこれより、ミッションブリーフィングを開始する」

一番前の真ん中の席に座る支部長、八十島介渡が口を開けた。

「今回は帝国軍部から直々に二つ、依頼がきている」

「二つ」という言葉に、団員達は思わず唾を飲んだ。

「一つは貴族鎮圧作戦。依頼主である帝国軍部が北方にて貴族達の反乱を確認。これらの鎮圧に加担して欲しいとの事だ。総戦力は一万二千、主力部隊は二千と推測される」

介渡は一つ目の資料を提示した。

「まさか、そいつら全部を俺達が相手するってのか?」

グロウは少々呆れ顔で尋ねた。

「いや、実際に鎮圧にあたるのは帝国軍から遣わされる二個師団だ

「じゃあ俺達は何をすればいいってんだ?」

「私達の任務は二個師団が戦っている最中、静かに敵地に潜入し敵の補給路を断つことだ。敵軍の進軍方向は北から西。つまり補給路も北から西に伸びているという訳だ。この作戦を成就出来たならば、敵軍の進軍速度は遅延。鎮圧部隊の負担が減り、貴族鎮圧作戦の成功率も格段に上がるだろう。また政府に貢献することで、コホルスΣの知名度も上がる。詳細は一通り作戦の概要を説明し終えたら携帯情報端末を配布するから、それで確認してくれ」

「それで、二つ目は?」

グロウの問いが聞こえるや否や、介渡はすぐに二つ目の資料と一つ目の資料を入れ替えた。

「もう一つは現在攻撃を受けているヲ島の防衛任務だ。現在ヲ島が他国の攻撃を受け、陥落寸前になっている。そこでアルカディアは現地の防衛部隊を撤退。敵軍か追撃に出たところを主力部隊と支援部隊とで挟み撃ちにする寸法だ。私達コホルスΣは指揮系統的には第三軍第七師団、第二十二大隊の傘下となりこの部隊と最も連携をとることになるのだが、今回この部隊も主力に招集されたので、私達も微力ながら加勢する事になった。作戦の詳細はまだ明らかになったいないが、敵の戦力は帝国軍と互角と捉えてくれればいい」

強力な神霊達で構成される帝国軍。それらと同等の戦力というのだから、発足したばかりのコホルスΣとは天と地程の差、いや、それ以上の実力差があるということ。団員たちは固唾を飲んだ。

「しかし二つの作戦を同時進行ということは、二手に分かれるということでいいんだよな?」

「その通りだね」

ヴァルドの問いかけに応えると、介渡は席を立った。

「貴族鎮圧作戦には、ヴァルド、グロウ、アラン、アシッドの四人に、サポートとしてフリートをつける」

その言葉を聞いた途端、団員達は顔をしかめた。

「マクロはどうした?」

ヴァルドの問いに、介渡はさも当然のように答えた。

「マクロは私と一緒にヲ島防衛作戦に連れて行く」

団員達がマクロの方を見ると、彼は一応はブリーフィングを聞こうとしているのだが、睡魔との戦いに敗色が出始めていた。

「とすると今回僕達は、マクロの応援なしでやらなければならないんだねぇ」

アシッドは笑って見せるが、いつもと違って余裕のない、引きつった笑顔を見せた。そして余裕がないのは、他の団員も一緒であった。

ただ一人を除いては。

「そこで私がサポートに入るのですね」

フリートはヴァルド達と違い悪魔で、その中でも有数の実力を誇る。更に言えば、フリートのコホルスΣ加入前の活動場所は北方である。貴族で構成される反乱軍も北方に陣取る。北方の位置や貴族の勢力、軍隊の兵力やその特徴を知るフリートは、貴族鎮圧作戦に最適性とも言える。

「流石に帝国軍に匹敵する敵勢力に、私だけでは辛いからね。本来ならフリートも連れて行きたい所だけど、君達も前回の戦いからして人間だけで挑むのは不安だろう」

団員達はその意見に同意すると共に、まだまだ自らの実力が足りないことに申し訳無さを抱いた。

「そんな顔をするな。寧ろまだまだ発足したばかりなのにこのように責任重大な任務ばかり任せてしまって申し訳ない。しかし両作戦が成功した暁には、志願者も出て、団員も増えるだろう。そうなると部隊数も増えて君達の負担も軽減出来る。投げやりで申し訳ないが、ここが正念場と思って踏ん張ってくれ」

介渡は頭を下げた。

「案ずるな。俺達は最初からそのつもりであんたについてきた」

「そう言ってくれると有難い」

介渡が顔を上げると、団員達は存外やる気に満ちた表情をしていた。

介渡はその光景を満足そうに見渡すと、おもむろに次の資料を用意した。

「作戦の概要はこのぐらいにして、次は君達の作戦行動をより円滑に進める為の兵器を用意した」

席を立ち、壇上に上がる介渡に団員たちの注目が集まる。

「先程言った携帯情報端末の事だ」

介渡はそう言うと、ベルトに付けていたホルダーからボールのような機械を取り出した。介渡が触れた瞬間に起動し、大きな目玉のようなカメラがチラチラと辺りを見回している。

「私が開発した隠密特化型携帯情報端末、『MilBall Mk.l(ミルボールマークワン)』だ。ミルとでも呼んでくれ」

介渡がその名を呼ぶとミルは途端に介渡の手を離れ、自動でその場を浮遊し始めた。

「ミルはこのように起動すると所持者の付近を浮遊し、自動で追従してくれる」

介渡が団員達のいる方に歩き出すと、ミルもそれについていった。

「ミッション中に情報を確認したい時はミルを使え。「ミル」と呼んでやればこいつは自動的に近くに来る。ミル」

呼びかけられるとミルは介渡が言った通り介渡の近くにくる。介渡はミルを手に取った。

「ミルの中には作戦に応じた情報が入っている。現場のマップや作戦の目的の他にも、敵兵の大まかな位置や大型兵器の有無に渡るまでだ。他にも、情報端末にかざせば自動でハッキングしてくれるし、重要書類をカメラで読み取り記録する事も可能だ」

試しに介渡がカメラを資料に向けると、レーザーポインタが文字列をなぞり最後まで言ったところで、読み取り完了の文字がカメラから浮き出てきた。

「このようにマップなどもカメラから光で浮き出てくる」

「少し質問いいか?」

ヴァルドが手を挙げた。

「そのように浮遊されると自分の知らないところで敵に気付かれたりすることがあるだろう。そこはどうすれば?」

「良く聞いてくれた。ミル、ステルス」

介度がそういうと、ミルは瞬時に透明になり姿が見えなくなってしまった。

「ミルにはステルスモードが搭載されている。潜入時には常にステルスにしておけば、邪魔にならないだろう。それでも不安な時はミルをホルダーに入れておけば、勝手にシャットダウンしてくれる」

そう言って介渡がミルをホルダーにしまうと、ミルのカメラから光が無くなり動かなくなった。

「他にも録画録音機能や、サーマル、暗視カメラ、ソナーも搭載し、敵や車両をマーキングする事も可能だ。情報を確認する以外にも、偵察させるもよし、武器として使うもよし、状況に応じて活用してくれ」

介渡は全ての資料を纏めてファイルの中にいれた。

「質問はないか?」

その問いに答える団員はいなかった。

「では最後に、今回も基本はノーキルノーアラートを目標とするが、どうしても見が危ない時は殺害を許可する。無理はするなとは言えないミッションだが、必ず生きて帰ってくるように。以上、解散!」

団員達は配布されたミルを持って会議室を後にした。