yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 70

「・・・させないわ」

目の前に立ち塞がったのは、霊夢魔理沙だった。二人は鬼のような目でレイルを睨むと重心を低くして身構えた。

だが、レイルは少しも動じなかった。

「・・・嬢ちゃん達には出来んよ」

「そんなのやってみなきゃわからないぜ」

「バカな子達だ!」

レイルは一瞬にして間合いを詰めると、二人の腹にそれぞれの手で打撃を加えた。二人は口を開けて悶えるが、レイルが手を抜いたのか、それ程大きなダメージではないようだ。

「今の一撃で本気を出していればお前達は死んでいた。どういう事か分かるか?」

レイルは二人を見下しながら、階段の方を振り返った。

だが、二人はそれでも立ち上がった。そして、魔理沙は言った。

「生きてるんだから、まだ勝機があるってことだな!」

霊夢は大幣を、魔理沙はミニ八卦炉を構えてレイルに向けた。その威圧感は、レイルにも背中越しに伝わってきた。

(本当にやるきか・・・)

レイルは呆れたように、また振り返った。

ヒューマノイドは駄目だった。無駄な殺生はしたくないんだ。俺だって殺人鬼じゃない」

「そんなの、分かってるわ・・・」

霊夢はより強くレイルを睨みつけた。

「ヒューマが全てを覚悟した上であんたに挑んだのは分かる。ヒューマその戦いで敗れても決して文句は言わないなんて分かってる。でも、これはあいつの問題じゃないの」

霊夢は少し間をおき、大声で言い放った。

「これは幻想郷の問題よ!博麗の巫女として、ひき下がる事はしないわ!」

「それは私もだぜ」

魔理沙は帽子を深く被りなおすと、不敵な笑みを浮かべた。

「私は誰から頼まれた訳じゃないが、私だって異変解決やってんだ。それなのにこんな大きい異変、見逃せって方が無理なんだぜ!」

「・・・そうか。全く、それなら仕方が無い」

レイルは改めて二人に向き直すと、今度はレイルが鬼のような、いや、それ以上の気迫で二人を睨んだ。

「ならば試してみよう。お前達がこの輪廻を終わらせるに値するかどうかを」

レイルが両手を開くと、そこから原理不明の謎の衝撃波が発生し二人に襲い掛かる。魔理沙は帽子が飛ばされないよう、慌てて片手で押さえた。

「来るわね・・・」

「ああ!」

それだけの合図をすると、二人はお互いに背中を預ける形でくっつき合った。お互い死角をカバーし合い敵に迅速に対応する作戦だ。誰に教わった訳ではないその作戦は二対一という数的有利な状況を活かした最善の策であると言える。

だが、数字だけでは勝敗が決まらないのが戦場である。

「そんな安直な思考、読み取れないと思ったのか?」

「なっ!」

レイルは接近戦ではなく、遠距離から波動を撃ち出した。それは魔理沙に向かっていたのだが、スピードがある訳ではなく避ける事は容易だった。

ただし、真正面から飛んでなければ。

(マズい、このままだと霊夢が・・・!)

そう、例え自分が避けてもその波動弾は霊夢に直撃してしまう。スピードが無いといっても圧倒的に遅い訳ではないので、今から伝えても間に合わないだろう。

魔理沙は悩んだ。悩んだ結果、

「相殺させれば・・・!」

それは良い策とは言い難かった。何故なら魔理沙弾幕の形成に、全て集中を注いでしまったからである。

その僅かな隙でレイルは、魔理沙の真正面に立っていた。

「やべ・・・・・・」

魔理沙が目を丸くすると、次の瞬間、魔理沙はその場からいなくなった。レイルの蹴りが背中に命中し、そのまま吹き飛んでしまったからだ。

「っ!」

霊夢はその音を聴くと、霊力を込めた札を持ってレイルがいるであろう方向に投げた。しかし実際には、レイルはそこにはいない。

振り返った霊夢の背後に、移動していたのだ。

「お前は札を内側から投げる。そしてお前は右利き。すると振り返りながら攻撃する時は右回りになるから、左側から回れば・・・」

レイルは手の平で霊夢の背中を突き飛ばした。多大な負荷が霊夢の背中にかかる。

「げはぁっっ!!!」

「お前の背後に回りこむなんざ簡単なんだよ」

霊夢は吹き飛ばされ、地面を転がっていくと魔理沙と衝突した。それで霊夢はようやく止まったが、二人はそれぞれ体を強く打った。

「言っただろ?嬢ちゃん達じゃ俺は倒せない」

レイルは再度、二人を見下した。

霊夢達に対応できなくてヒューマに対応出来る理由。それは実力ではなく、経験の差であった。

昔にも、幻想郷には殺し合いが存在した。それはスペルカードルールが制定されるよりも前、霊夢が今より少し幼かった頃の事。通称「吸血鬼異変」として知られるそれは、妖怪と妖怪同士の「殺し合い」であった。だが、それ以降殺し合いは弾幕ごっこという「遊戯」にとって代えられ、殺伐とした争いは絶った。

霊夢の殺し合い経験といえば、その程度だろう。その異変も解決したのは力のある妖怪達であった。そして魔理沙は、その経験すらあるか危うい。

対してヒューマは、四千年の間第一線で戦ってきた。技術や知識等はまれに単純な力を上回る。力では霊夢魔理沙と肩を並べるかそれ以下かのヒューマも、その知識や技術では郡を抜いていた。

四千年の歳月で得た、人間としての技術でレイルに対抗したヒューマに対し、あくまで能力の範疇でのみ力を持つ霊夢魔理沙ではレイルを討ち取る事は不可能だった。