yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 10

私は拠点の奥の方へと進んでいった。

闇雲に進んでいるわけではない。しっかり霊夢ちゃんが捕らえられている場所へ向かっている。

そう裏付けられるのも、新しい協力者のおかげだ。

「無線の調子はどうだい?」

「素晴らしい、といった所だ」

無線に出たのはヴァルド君だった。

「こんなにも小さいサイズなら誰かにバレる可能性も少ないな。しかし一体何故こんな物を幻想卿の者が持っているのだ?軍隊でも幻想入りしてきたのか?」

「確かに幻想入りしたね、軍隊。でも何かよく分からない条約でそういった物の持込は禁止されてるからそれが理由じゃないんだな。それは全部私の私物だよ」

「これが私物?お前はよく分からないな」

「最近よく言われるよ。・・・さて、無線を切るよ。長話し過ぎるといつ誰が来るか分かったもんじゃない。お互いにね」

「分かった。何かあったらいつでも連絡してくれ。こっちからも連絡をいれるかもしれない」

「ああ」

プツンと無線が切れた。

麻酔銃をリロードする。カチャカチャっと音が鳴ったが、敵に感付かれることは無さそうだ。

 

 

ここが霊夢ちゃんが捕らえられている場所。

拘束する檻が一個だけでなく複数あるが、霊夢ちゃん以外にもひっとらえる気だったのか?

もしかしたら誰か捕まっているかもしれない。そんな疑念を抱いたが、敵兵の哨戒ルート的にそれは無さそうだ。

足音を立てないように気を付けながら進むと、檻の中に紅白巫女服を着た少女が見えた。

間違いない、霊夢ちゃんだ。

不本意ながら双眼鏡で顔や体を調べ偽者かどうかを示唆してみたが、それも無さそうだ。

私は手摺りから飛び降り、物陰に身を隠した。

ざっと見た限りでは手前の霊夢ちゃんが捕らえられている檻の付近に敵兵が5人。奥の連絡通路に3人。哨戒兵4人の計12人。

「キツいな・・・」

そこそこ広い部屋だから隠れるのには申し分無いが、霊夢ちゃんを救出するのには多勢に無勢。活路は無かった。

「こいつを使うか・・・?」

目線の先には複数のスタングレネードがあった。これは破裂と同時に盛大な爆音と眩しい光を伴い、一気に複数の敵兵の視力、聴力を奪える。これを一気に断続的に使えば、私の腕ならこの部屋の敵兵全員を眠らせることなど容易いことだろう。

しかし、問題点が二つある。一つは、あまりの轟音に違う場所の敵兵に聞こえてしまう恐れがあるのだ。そうなってしまえばこちらに勝機は無い。

もう一つは霊夢だ。長い間拘束され続けだいぶ体力を消耗しているだろう。そこにこんな物を投げ込まれたら・・・。霊夢ちゃんの悶え苦しむ姿が頭に浮かび、スタングレネードから目を離した。

いっそ銃撃戦はどうか?いや、それも駄目だ。流れ弾が霊夢ちゃんに当たったりでもしたらたまったもんじゃないし、そうじゃなくても霊夢ちゃんを人質にしてくるだろう。これでは抵抗する術が無い。

とすると、これを使うしか無さそうだ。

 

 

背後の壁を叩いた。鳴り響く乾いた音は有無を言わさず敵兵の耳に届く。

「今の聞いたか?」

「あぁ・・・敵かもしれない」

そこで会話が途絶えた。侵入者、つまり私に気付かれないように手で合図を送っているのだろう。

しかし、4000年以上戦場を彷徨っていた私には敵兵の動きは手に取るように分かった。

「っ!?誰だ・・・ぐわっ!!」

一瞬の内に敵兵を物陰の中に引きずり込み、持ち前の近接格闘術で手際よく気絶させた。

すぐさま催眠ガスを後ろに投げた。発生したガスは瞬く間に敵兵を無力化していく。

ガスマスクを装着してガスに備え、一気に霊夢ちゃんの元へ駆け寄った。

邪魔な檻を能力で壊し、霊夢ちゃんにガスマスクを付けた。

「っ・・・!誰!?」

「私だ。ヒューマノイドだよ」

「ヒューマ?随分礼儀正しくなったのね」

霊夢をおぶり、出口へ全力疾走した。

敵兵が大慌てで侵入者に備えていたが、恐らくもう遅いだろう。

念の為周囲にロンズデーライトの壁を貼り、敵地を駆け抜けた。

 

 

「そろそろ巻いたかな・・・?」

後ろを確認すると、もう敵が追ってくる様子は無かった。

霊夢を適当な切り株に座らせ、はぁ~っと息を吐いてその場に寝そべった。

流石に疲れた。

途中で壁を貼ったが、そのおかげで酸素が供給されなくなって倍疲れた(そして壁を解除したら銃弾の嵐でそれを掻い潜るのにも疲れた)。

大地の冷たさが熱った体を癒す。自然は最高だ。

「ちょっと遅くない?もっと早く来れなかったの?」

そっちの冷たさは求めていない。傍迷惑だ。

「私だって頑張って此処まで来たんだが・・・」

「まあでも・・・ありがとう」

「それを真っ先に言うのが普通じゃないのかい?」

「は?感謝してるのに無下にする気なの?」

「あーはいはい私が悪うござんした」

「むかつくわねその言い方」

「何でそう攻撃的なんだい?余程不安だったんだね」

「・・・そうよ。怖かったの・・・何をされるか分からない状態で、いつ殺されるか分からない状況でずっと一人で閉じ込められてたから・・・」

「それが普通だよ。か弱い少女には耐え難い。霊夢ちゃんはよく頑張ったから、もう帰ろう。十分に体を休めたらまた大暴れしてくれ」

「何よそれ。全然か弱くないじゃない」

「精神的な事を言ったんだ。実力は私よりあるじゃないか」

あっそ。と霊夢はそっぽを向いた。多少寂しいが、こっちの方が霊夢ちゃんらしい。

私は霊夢ちゃんを連れ、帰路についた。

 

 

・・・直後、少し離れた場所で爆発音が鳴り響いた。