yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 54

ヒューマノイドの肉片が、辺りに散らばる。

 

それはレイルの頬を掠めた。

 

ビシャアァァァァァァアアッ!

水が地面に跳ね返るような音がした。

ヒューマノイドの原型は、そこには無かった。

「少しパワーアップした程度で俺に歯向かうからだ」

レイルは頬に付いた血を拭って、吐き捨てるように告げた。

辺りが静まる。レイルは蔑む様な目でヒューマノイドの血肉を見つめた後、それを蹴り飛ばした。

 

もうここには用はない。レイルは踵を返して歩いていった。恐らくは、この幻想郷の者を皆殺しにするつもりだろう。

 

だが、その思惑は阻まれた。

 

グサッ。

「うっ!?」

周辺に散らばった血肉が、槍のような形状になってレイルに次々突き刺さる。

物凄い量だ。その貫通性は如何に神に匹敵する耐久力を持ったレイルでも、まるで紙に穴を開けるようにいとも容易く貫いた。

レイルから噴水のように血が吹き出る。

「くそっ・・・鬱陶しい!」

レイルは体に刺さった槍を全て引っこ抜き、向かってくる槍を全て払った。

やがて足元には槍の束が出来た。

(いつのまにダミーにすり替えた!?)

レイルは、ヒューマノイドが自身が爆散する寸前に偽者の体をすり替えたと考えていた。

用意周到なヒューマノイドなら、十分に成せる業だ。

(どこにいる・・・っ!)

レイルは周囲を警戒した。ヒューマノイドは、近くにいるに違いない。

 

その予想は当たっていた。

 

だが、予想の斜め上を行くものだった。

 

「何処見てるんだ?」

「何ぃッ!!?」

その声は下から、槍の束から出来ていたのだ。

レイルは一度に多くの奇襲を受けて、槍が全てロンズデーライトによって出来ている事に気付けていなかったのだ。そしてヒューマノイドがロンズデーライトそのものになれるという事も頭から抜けていた。

「一瞬の油断が命取り、それが戦場だ!」

ヒューマノイドは能力に頼らず隙をついた。ここに戦士としてどれだけ突出しているかが現れた。

拳を硬化させ、アッパーカットのような形でレイルを殴るヒューマノイド。見事レイルの顎に命中した。

「ごふッ!!!」

レイルの顎が外れ、同時に上へ打ち上げられた。

「確かに人間の力じゃ神や妖怪を一発で仕留めるのは難しい。でも私の『もう一つの能力』ならそれが可能になる!」

ロンズデーライトの硬さ。確かにこれを利用すれば相手が人外でも一発で大きなダメージを与えられる。

それを代弁するかのように、レイルは頭から地に落ちた。

「肉体が弾けようと、意識さえ保っていられれば再生する事は可能なんだ。人間だからこの程度で即死するだろうと見誤ったな」

「が・・・くそ・・・」

レイルは砂を払いながら立ち上がった。だが口からは絶えず血が零れ、足もふらふらだった。

「どうする?まだ、やるか?」

ヒューマノイドがそう訊くという事は、「もう戦わないのなら助けてやらんこともない」という事なのだろう。

だがレイルは、その要求には応えなかった。

レイルが少し力を込めると、外れていた顎が治り、流れていた血も止まった。その生命力は流石神の力というところか。だが、ヒューマノイドは物怖じするどころか、逆に闘志を燃やしていた。

「久々だな。こうして全力を揮うのは」

ヒューマノイドも全身に力を込めた。放出される気が一種のエネルギーとなってヒューマノイドを包むその様は、まるでヒューマノイドから火が出ているようだった。

「それは俺とて同じだ」

レイルも先程のように光り始める。こうして二つの巨大エネルギーが一箇所に集まった。

「行くぞ!レイル!」

「これが最後だ!」

二つの巨大エネルギーは、互いにぶつかり合った。