yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 34

「全く、お前こんなにトロかったのか?」

「五月蠅いなー。そんなに焦る必要もないだろう?」

そういって、茂みえを掻き分けながら男は姿を現した。

身長おおよそ165センチ。体つきがよく、見かけによらず丁寧な口調。それはマインドもリーザも、アジも予想がつかない人物だった。

「ヒ・・・ヒューマッ!?」

アジが声をあげた。そう、その人物とはヒューマノイドであった。

「ッ!?何故汝がそこにいるというのだ!我は確かに汝を手中に収めた筈・・・」

マインドはアジの背後の、自らが能力を使い支配したと思われたヒューマノイドに視線を向けた。

しかし、そのヒューマノイドはいきなり黄褐色透明に変色した。そして顔の右側の部分から静かに崩れ落ち、原型を完全に失ってしまった。

「な・・・」

「君は私の事をそれなりに調べていたようだが、私はまだこの幻想郷で使ってない能力の使い方があってな」

身代わりの術の手品は、こうだ。

「簡単な事さ。私は硬化させた後に元の体に戻るという性質を利用し、失った体を再生することが出来る。これは君達も知っている事だろう?これはもっと大まかに言うと、ロンズデーライトを肉体に変換出来る、ということだ。」

「まさかその性質を利用して・・・。『命の宿らない、自分そっくりの肉塊を作った』ということか・・・?」

「そういう事だね。後は内側をロンズデーライトにして、普通の人間そっくりの動きを再現していたのさ。これはフランちゃんや萃香ちゃんのそれとは違い自我を持ってないから操作するのに莫大な集中力がいる。だから私が出来るのはせいぜい一体ってところか・・・。しかしまぁ、君が安易に引っ掛かってくれて助かったよ」

ぐぬぬ・・・」

マインドは悔しそうに歯軋りをした。結局の所、ヒューマノイドはマインドの一枚二枚上手だったのである。

「さて・・・。すまないね、アジちゃん、リーザちゃん。策とはいえ君達に怪我を負わせてしまった」

「謝る必要等無い。お前が無事ならそれでよい」

「アジの言う通りだ。今はお前の腕が頼りなんだ」

「そうか。さて・・・どうせ見ているんだろう、リルアちゃん。不甲斐ない姿を見せてしまったようだ」

ヒューマノイドは袖ををたくし上げた。ヒューマノイドが本気になったサインである。

「名誉挽回といこうか!!」

ヒューマノイドが目をカッ!と見開く。その眼差しはマインドの体を貫き、そして硬直させた。

その瞬間を、ヒューマノイドは見逃さない。

マインドの腕を引くと同時に足払いをし、マインドの体が一瞬宙に浮く。

その一瞬。ヒューマノイドはマインドを高く蹴り上げた。

「ごふっ!」

マインドが血反吐を吐いた。しかしヒューマノイドは容赦しない。上空に吹き飛んだマインドをジャンプで追い、何発も殴った。

「な、なあ・・・。ヒューマ、ちょっとおかしいんじゃないか?」

ヒューマノイドは、普段は決して人を殺したりしない。そして必要以上の暴力を加えない。それは彼が常に心に余裕を持ち、平常心を保っているからだ。

しかし今目の前にいるヒューマノイドは、拳の一つ一つに明らかな殺意を持っている。それは魔理沙でも分かる事だった。

ヒューマノイドは精神的に追い詰められているのか。いや、そうは見えない。表情は至って普通だし戦況も上手く運んでいる。不安要素は無いはずだが・・・。

「お前は気付かないのか?奴の正体が」

アジが突然魔理沙に問いかけた。

「正体?何の話だ?」

魔理沙は訳が分からない、という顔をした。

「よく見ろ。奴の心臓部分を」

アジはマインドを指差した。マインドの心臓といえば、先程ヒューマノイドが銃撃し、風穴が開いている。筈だったが・・・。

「傷が・・・無い!?」

「いつからか分からんが、奴は心臓を再生していた。そんな事は人間の成せる芸当じゃない。そういう能力を持っているなら別だが、そのような素振りは見せていなかった。ということは・・・」

「ということは・・・」

「奴は妖怪だ」