yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 24

「ぐあぁっ!」

衝撃と共に華扇の体が宙に舞う。それは突然のことであり、華扇は受身も取れず地面に叩きつけられた。

「・・・まずは一発。これでまた、汝は我が手駒に近付いた」

崩れた壁から出てきたのは体つきがよく大柄な男。眉間には常にシワがよっていて周囲を威圧し続けている。誰もがその姿に恐れ戦くだろう。

「迂闊でした・・・まさかあの迷路を突破する者がいたなんて・・・っ!」

「正確には、壊してきたのだ。あの程度粉々にするなど他愛もない」

倒れこむ華扇にゆっくり近付く男。その重圧に華扇は一瞬押されかけた。

震える手で何とか立ち上がり、臨戦体制を整えた。

「女子(おなご)ながら立ち上がるか。ふむ、いい目つきをしている。百戦錬磨の目だ。我輩はマインド。『意志』の意を持つ。名の通り意志を司る力を持つ」

「ってことは・・・」

「やはり情報が通っているか。察しの通り我輩はレイル殿の取り巻き。組織の右腕なる者」

独特の構えで華扇に向かうマインドは、先程に増して威圧感を出している。

「我輩の能力は力で叩き伏せるものに無き、意志を操り手駒にするものなり。しかし汝のその精神力、中々に操れそうもない。我輩の手で十分弱らせてから、我輩の手駒になってもらうぞ」

「先程の一撃・・・障壁がありながらあの威力ですか。能力以外にも膨大な力を有しているのでしょう。油断出来ませんね」

「・・・いざ!」

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

いつまでも攻勢に出れないヒューマノイドは、確実に敵部隊によって体力を蝕まれつつあった。

「例え世界一硬い物質であろうが超高温には耐えられんだろうなぁッ!!」

隊長が放った超高温の炎の塊は、周辺の木々を炙りながら撃ちだされた。動きが鈍っていたヒューマノイドは、避けることは叶わなかった。

「ぐ、おおお!」

硬化している為火傷にはならない。が、その火中はまさに灼熱地獄。いかにヒューマノイドといえどその熱さとそれからくる苦しみに何時間も耐える術はなかった。

灼熱は、確実にヒューマノイドの命を削り取っていく。それだけではない。ロンズデーライトとなった体を徐々に溶かしていく。

「・・・っ!っ!」

喉が枯れ、声が出せない。文字通り絶体絶命だ。

「つまらん。とどめを刺せ。奴の体跡形もなくな」

怒涛の銃撃がヒューマノイドに浴びせられ、炎の赤に鮮血の紅が混じる。これを受けては跡形もないだろう。

たとえ4000年以上戦ってきた強者でも死んでしまう。これが殿軍。これが戦争だ。

そしてそれをヒューマノイドは熟知していた!

「ぐおおッ!?」

突如隊長の首に腕が回った。そして手際よく隊長を気絶させた。

「な!隊長!撃て!皆撃つんだ!」

隊長の呻き声に反応した一般兵が、一斉に凡用機関銃の掃射を始めた。これを喰らったら血肉が吹き飛ぶ等一溜まりも無い。

が、ヒューマノイドにそれはありえなかった。彼にはロンズデーライトの絶対的装甲がある。上手くいけば少しのダメージは与えられるかもしれないが、その少しのダメージで体力、集中を切らす程ヒューマノイドはヤワではない。

それを体現するかのようにヒューマノイドは気絶した隊長を自身の背後に追いやった。流れ弾が当たらないように。そして自身の信条を貫き通す為に。

機関銃の弾のスピードを考えても、この手際の良さがいかに4000年間過酷な経験をしてきたのが窺える。

そして長い経験を活かしていたのはヒューマノイドだけではなかった。

「っ!?何だ、MG3がっ!?」

突如一般兵達が持っていた機関銃が宙に浮いた。そして一点に萃められていく。

「作戦成功ってやつだね!」

伊吹萃香だ。彼女が能力で機関銃を一点に集めたのだ。

「鬼は一人で戦ってるイメージが強いから大丈夫かとは思ったけど、杞憂だったみたいだね」

「当然!これが鬼の力よ!最初から私を出せば良かったんだ!」

(冗談じゃない。アザトースが来る前に幻想郷が崩れてしまうよ・・・)

二人はさておき、戦う道具を失った一般兵達は途方に暮れた。

おそらくサバイバルナイフも持っているのだろうが、目の前の兵士と鬼に近接格闘術で挑んで勝てる気はしなかった。

両手をあげ地に伏せる。降伏の印だ。

「懸命だ。私はともかく、萃香ちゃんに抗っていたら君達の命は無かったかもね」

「おいおい私が人を殺すとでも?とんだ勘違いだ、全ての鬼が無情な訳無いだろ!」

「あーはいはい分かった分かった酒臭いから近寄らんといて~」

「あ?アンタ、死にたいのか?」

「人を殺さないんじゃなかっt」

言い終える前に萃香がプロレス技を仕掛けた。逆十字固めだ!(※うろ覚え)

「ぎゃー!すいません!すいません!分かりました人間風情が鬼に抗うのが間違いでした痛い痛い!」

「ん~土下座したら許してやろうかねえ」

「出来ないの分かってて言ってるよね!?ねぇ!?」

「お前ら・・・」

「「!」」

一般兵の横槍で二人の動きが止まる。

「確かに俺達は制圧したな。俺達も抵抗する気はない。だが他の部隊の奴等はどうだ?まだ負けているとは限らないし何処で誰が死んでも・・・」

「く、はっはっは!」

兵士が告げると萃香が笑い出した。つられてヒューマノイドも笑みをこぼす。

「幻想郷を舐めるんじゃないよ。全員粒揃いの化け物だからねぇ。人間で太刀打ち出来るのは博麗の巫女ぐらいだよ」

「君達の戦力は普通の軍隊よりも素晴らしいものを持っている。だがこの幻想郷の人達は何にも勝る武器を持っている。それはこの地への『思い』だ」

思いが強いから数段強い力が出る。とヒューマノイドは続けた。

それに対し一般兵は疑念を抱いた。

「こちらの諜報員の情報だとお前達は相当な負傷者が出ているんじゃないのか?永遠亭とかで療養を受けているとか・・・」

はっはっは!とヒューマノイドは高笑いした。萃香は聞きなれない言葉が飛び交って頭に?マークがついている。

「君達のことは評価している。だからこそ、あの永遠亭に諜報員を潜ませていることはしっかり予想出来たよ。残念ながら彼処にいる負傷者の殆どは偽装だ」

それを聞いた途端、萃香とは対象的に一般兵達は!マークを頭に浮かべる。

「全部、計算済みさ」

得意気な顔でヒューマノイドは告げた。勝利宣言だ。

「ふふっ。はっはっは!完敗だね。アンタに勝てる気がしないよ。俺達じゃね」

一番先頭にいる兵士が、気絶してる隊長に目をやった。

「本当に犠牲者を出さず終わらせやがった。アンタとアンタの友人達には感心させられるよ。俺達が届く場所じゃない」

全員膝立ちで降伏のポーズを取り直した。その顔はやれやれ、といわんばかりに笑っていた。

「さて、後は他の皆がどうにかしてくれるし・・・やっと組織の中核にまで迫ってきたか。ここまで来たら、最後までやり抜いて見せるか」

兵士達を背に二人は拠点への道を急いだ。