yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 76

介渡達の体の何倍もあるであろうそれは、七人を巻き込み、水平方向に吹き飛ばした。

介渡達は、カルビンの壁に激突する。

「ぐっ!」

「あっ!」

如何に神といえど世界一硬い壁に音速で叩きつけられてはたまらない。七人はそれぞれ軽傷を負う。

「ったく、ホント硬いよなこれ」

リヴェンの言葉は皮肉を含んでいた。

「で、どうするの介渡」

「取り敢えず無力化するしかない・・・。出来ればの話だが」

「やってみるしかないって事ね!」

白夜が真っ先にアザトースに飛び掛る。そして次の瞬間には、アザトースの眼前にまで迫っていた。

だがアザトースも、既に防御網を整えていた。

「っ!?」

アザトース無数の触手を交差させて白夜の前に突き出した。それにより白夜の攻撃は触手を破壊する事は出来たが、本体に損傷を与えるには至らない。

それどころか逆に、アザトースは無防備になった白夜に反撃を加えた。

「ちっ!」

多少の隙が出来ていたとはいえ、白夜も武神。高速で振り下ろされる触手を片手であしらった。

これ以上の接近は不利とみた白夜は、介渡達の下へ戻った。

「あちらも相当躍起になってるようね・・・」

全員がアザトースを注視する中、アザトースに変化が起きる。

アザトースはゴムボールの様に体を伸縮させた。

「っ?何をする気だ?」

その動きは段々と激しくなっていく。

するとアザトースの体から、紫色の霧が噴出し始めた。

「おいおい・・・」

「如何にも有毒って感じよね、あれ」

リーザと白夜が苦笑する。

「本当に最悪だ」

介渡に焦燥感が走る。というのも、あのどんな症状が出るかも分からない毒霧を吸ったりでもしたら、全員戦闘不能になりかねない。

介渡は球状のカルビンの壁を消した。それにより毒霧は霧散。全員が戦闘不能になるという窮地は免れた。

だが引き換えに、先程まで壁の外で待機していた宇宙生物達に包囲される結果となった。

「ちっ!」

リルアはすぐに魔法を発動し、目の前の生物達を撃ち落した。が、第二波、第三波と波状攻撃の形で敵は押し寄せてくる。

初めは遠くの位置で撃墜出来ていたものの、数が多く対処が間に合わず、相手はどんどん介渡達に接近してきた。

「くっそ!何て数だ・・・!」

数だけではない。遠くからはアザトースやヨグ=ソトースが夥しい数の迫撃を行っている。

「何て難しい弾幕ごっこかしら・・・!」

白夜が毒づく。その背後には、ジュブ=ニグラスが迫っていた。

「白夜!」

「っ!」

アジが叫ぶも既に遅く、ジュブ=ニグラスは尾のようなもので白夜を薙ぎ払った。

「ぐっ!」

白夜は下へと突き飛ばされる。そして白夜が居た所から、宇宙生物達がどんどん進軍してきた。

「ヤバいぞおい・・・」

殆どの者がジュブ=ニグラスとその他大勢の宇宙生物を睨む中、介渡は誰よりも早く白夜の元へ駆け付けた。

吹き飛ばされる白夜と並行した介渡は、腕を伸ばし、白夜の腕を掴んだ。

「大丈夫か!」

介渡に掴まれたお陰で勢いが止まった白夜は、介渡の顔を見た。

「ええ、大丈夫。迷惑かけたわね」

白夜の体に異常は無いようだ。二人は改めてアザトースの方を見ると、介渡を追った宇宙生物達が雪崩れのように押し寄せていた。

「・・・あいつら、大丈夫かしら」

リルア達の姿は宇宙生物達の影に隠れて見えなくなってしまった。

「大丈夫だ、とは言い切れないが彼女らを信じよう。今は二人でこの場をどう切り抜けるかだ」

二人は宇宙生物達を見ながら、背中を合わせた。

「あれ、抵抗は無いのか?」

「この状況でそんな事言ってられないわ。ていうかあんた、ホント小さいわよね」

「・・・深傷を抉らないでくれ」

二人はその一瞬だけ談笑すると、真剣な形相へと豹変した。

 

 

「・・・」

外では激しい衝突からの轟音が鳴り響く。そのような事態にも関わらず、幻想郷の民は、隠れて事が過ぎるのを待つしかなかった。

博麗霊夢もまた、同様であった。

「暇ね・・・」

「じゃあ何かするか?弾幕ごっことか」

霊夢の隣に居た魔理沙は、わざとらしく戯言を言って見せた。

「冗談はよしてくれない?」

「まあ、そうだよな」

当然の返答を受けて、魔理沙はつまらなそうに洞窟の外を見た。

「こんな狭い場所で出来る訳無いでしょ」

広かったらやるのかよ、と今度は魔理沙がツッコミ役になった。

そんな諧謔的な雰囲気が漂う中、突如二人の目の前の空間が裂けた。

「あら、紫。どうしたの?」

スキマから出てきた少女、八雲紫は地面に着地した。

「どうやら外はだいぶ苦戦してるみたいよ?」

紫は艶笑した。

「あら、よく外に顔を出す勇気があったわね」

「ちょっと、私は妖怪の賢者よ?一回見たら慣れるわよ」

「それで、何の用なんだ?」

魔理沙は壁によっかかり、紫は付近の岩に腰掛けた。

「いや、ね。貴女達もそろそろ暇してるんじゃないかと思ってね」

「図星だぜ」

「それで私達なりに出来る事を考えてた訳よ。そしたら私、凄い事思いついちゃった!」

紫は人差し指を頬に当て、あざとい笑顔を作った。二人が冷めた目でそれを見ていたのは言うまでも無い。

「・・・介渡って今まで幾つもの世界を救ってきたと言ってたでしょ?それは介渡に感謝している人達も多いって訳」

「そりゃ何てったって四千年だもんな。万は優に超えてるんじゃないのか?」

「そしてもう一つ目をつけて欲しいのが、神様について。神様は信仰によって力が増減し、また大量の信仰が手に入った者は神になると言うじゃない?」

「確かにそうね。でもそれがどうしたの?」

「介渡が救ってきた世界の人々の感謝。これは長い年月を経て、どうなると思う?」

「・・・成る程あんたが言いたいことは分かった」

霊夢魔理沙はそれで察し、それ以上の説明を拒んだ。

「でもそれだと、幻想郷の結界を緩めなければならないわね」

「危険な賭けになるな」

「どうする霊夢。貴女はこの賭けに乗る?」

「あんたはどうするのよ」

「貴女の判断に任せるわ」

「なら答えは一つね。イエスよ」

「それでこそ霊夢だぜ!」

魔理沙霊夢の肩を叩いた。だが力加減を間違えたのか、霊夢は肩を押さえて魔理沙を睨んだ。

「そうとなれば早速計画実行だぜ!」

その視線から逃れるように魔理沙が急かす。霊夢が諦めた様子で溜め息をつくのを視界の端で捉え、胸を撫で下ろした。

「ところで、それは本当に貴女が考えた作戦なの?」

「え?」

紫は慌てた様子で霊夢を見た。

「その話の通りならそんな大規模な話、何かあんたに不釣合いなのよね。ま、あくまで勘だけど」

「・・・でも貴女の勘は鋭いわよね、その通りよ。これは私が考えた作戦じゃないわ」

紫は隣にスキマを作った。

「この作戦は全て彼が作ったものよ。全く、せっかく株を上がるかもしれないチャンスだったのに」

スキマが開き、中から男が出てきた。

「・・・これはどういう事なの?」

霊夢が懐疑的な目で紫を見た。