yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 64

「ーーそうして俺には仲間が出来た。俺のせいで死を確約された残酷な運命を持つ仲間が」

レイルの体は見る見る内に人間の姿に変わっていき、先程のレイルと相違ない物になった。

だが、そうであってもその体はニャルラトテップが創り出した幻想に過ぎないのだ。

「それがヴァルドやアシッド達・・・と。君も、君達も私と同じ、アザトースの被害者なのか・・・」

「俺は自分がどうなったって構わない。だが俺のせいで、他人が理不尽に死に逝くのは本当に絶対に嫌なんだ。それに、もうそんな光景見てられない」

レイルの表情は至って穏やかだった。だがヒューマノイドはその裏に、確固たる正義の心と底なしの深い哀しみを見た。

「・・・では何故君は霊夢ちゃん達を傷付けたりした?彼女達は関係ない筈だ」

レイルは目を見開き、ヒューマノイドの目を睨んだ。

(何て威圧だ・・・)

「・・・以前文献で見た事があってな。忘れられた者達が集う、幻想郷。俺はこの地で最後の望みを託しに来た」

「望みだって?」

ヒューマノイドは心底驚いた。それだけの仕打ちをニャルラトテップに受けていながら、まだ希望を捨てていないとは。

「元々幻想郷には目を付けていた。こうも実力者が揃う世界というのは他に例を見ないからな。この幻想郷なら、俺を止める事が出来るかもしれない、と・・・。でもこの地には、大きな欠点があった。」

レイルは霊夢達の方を見た。

「・・・何よ」

それに気付いた霊夢は、警戒しながらも応えた。

「幻想郷は、驚く程平和だ。ずっと俺が求めていた物の全てみたいな世界だった。だがそれ故に本当の戦いになった時に脆弱性があると踏んだ。ヒューマノイド、お前が思ったようにな」

「それでこの地に立ち入る事は避けていた、と。そしてこのタイミングで幻想郷に現れたという事は・・・」

ヒューマノイドに一つの仮説が浮かんだ。

「・・・私、か。そして更に少し前に幻想入りした、あの武神達も」

「ご名答」

レイルはコクッと頷いた。

「お前の噂は聞いていたよ、ヒューマノイド。人間を遥かに凌駕する実力、寿命を持ち、色んな世界に救いの手を差し伸べて来たとね。俺にお前程の力があればって、羨ましく思うよ」

「正確には寿命が長いんじゃない。能力で延命していただけだ」

「誰よりも戦い慣れしているお前。そして神々の間でも最高位の力を持つ帝国の武神。チャンスは今しかないと感じた」

直後、レイルは両足を踏み込み思いっきり大地を蹴った。圧倒的な筋力から生み出される推進力は、十分の一秒も掛からずにヒューマノイドの真横に出た。

「!」

「これは誰にも利益の無い、俺の為でしかない極めて自分勝手な賭けだ」

そのままレイルは、ヒューマノイドの顔面に平手打ちをした。人間はおろか低位の妖怪なら顔面が粉々になるような一撃だ。

だが例のごとくヒューマは直前にカルビンで硬化していた。

「自分勝手な賭け、だと?」

「俺を殺せヒューマノイド。妖怪の賢者、博麗の巫女、魔法使いの少女。俺を殺せんようじゃ本気のニャルラトテップは無理だし、増してやアザトースの進撃を止められまい。俺に勝って、幻想郷を守ってみろ」

レイルはヒューマノイドを地面に叩きつけると、魔力を収束した弾丸を霊夢達に向け放った。とてつもない速さだったが幸い距離があったので、紫がスキマで何処かへ飛ばした。

「勿論降りたって構わない。だがそれではお前達が助かっても他の世界の幾多の生命が失われる。さあ、お前ならどうする!」

レイルは地面に寝そべるヒューマノイドの胸倉を掴み、頭を思いっ切りを殴った。ヒューマノイドは大きく仰け反る。

「次元の英雄ヒューマノイド!確実に助かる道を選ぶか無謀な戦いに身を投じるか!お前はどっちを選ぶ!!」

「上等だァッ!!!」

ヒューマノイドは倒れこむ体を右足で支え、逆向きに力を入れた。そして左足で踏み込み、レイルの頭を殴り返す。

「全部は無理でも、この手で救える範囲にあるものは必ず救う!!それは相手が例え神だろうとだッ!!」

態勢が崩れたレイルを、ヒューマノイドは上へ打ち上げた。

「がはっ!」

無防備な上体で宙に舞うレイル。その付近には輝きを発する球体が浮かんでいて・・・。