yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 60

「おいおい、どういう事だよ・・・っ!何でお前がここに・・・っ!」

魔理沙が怪奇と憤怒の表情で睨むその男は、粉塵を巻き上げながら博麗神社の鳥居付近に着地した。

「やぁ嬢ちゃん、また会ったね」

レイルはそう言うと、笑顔で手を振った。だが、単なる笑顔ではない。その不気味な笑みの裏には莫大な量の殺意が込められている事を、魔理沙は悟った。

「ヒューマはどうしたっ!?あいつと闘ってたんじゃ・・・」

「ああ、あいつなら別世界にふっ飛ばしておいた。その世界も崩壊した。

 

・・・死んでいるだろう」

 

「・・・え?」

 

まさか、あのヒューマが?幾多の死線を切り抜け、瀕死状態の自分達の前に颯爽と現れた、自分達の最後の希望でもあるヒューマ。そのヒューマが、死んだ?

魔理沙はその事実を理解すると、途端に足が竦んだ。再度ヒューマを失った喪失感よりも、レイルに対する恐怖感で頭がいっぱいになった。自分じゃこんな怪物、敵いっこない。

魔理沙は無意識の内に後ずさりを始めた。魔理沙の生物としての本能が、自身の体をレイルから遠ざけているのだ。

「おいおい、もうビビってんのか・・・。ホント面白くない」

レイルはゆっくり歩き出した。そして徐々に魔理沙との距離を詰める。計り知れない威圧のオーラが魔理沙に襲い掛かる。魔理沙の顔はどんどん青ざめ、体中に震えが走った。

「心配すんな、今楽にしてーー」

その時、レイルの動きが止まった。

「んなっ!?」

レイルは足元に強烈な違和感を感じた。ゆっくり足元を見てみると、そこには先程までには無かった筈の、夥しい数のお札が散りばめられていた。

(まさか・・・!あの巫女、やりやがったなッ!!?)

そのお札には人の体が上に圧し掛かると、自動で拘束する機能がついていたのだろう。レイルはおぞましい顔付きで博麗神社の境内を睨んだ。

 

そして次に視界に入ってきたのは、これまた夥しい数の弾幕だった。

「しまっーー」

レイルのパワーとスピードなら、力ずくで札の拘束を剥がし、全弾を難なくかわす事は容易だった。だが、レイルは足元の札に気を取られ、弾幕に気付くのに時間が掛かってしまった。成す術が無いレイルに向かって、色鮮やかな弾幕が襲い掛かった。

「こんなもの痛くも・・・」

そう考えていたレイルだが、

「ぐふぉッッ!!!」

弾幕に触れた瞬間、激しく悶えた。

ヒューマノイドと戦っていた時の傷が・・・!)

先刻の戦闘でヒューマが与えたダメージは、尚もレイルの体に負担を与え続けていた。体の至る所に生じた傷口、打撲痕に弾幕が当たり、レイルに確実にダメージを与えていたのだ。

すぐにお札から足を引き抜こうとするレイルだったが、激しい痛みがそれを妨げる。結局レイルは無防備なまま弾幕を喰らい続ける事となった。

 

「ーっ・・・・・・」

魔理沙はそんな光景を、呆然と見つめていた。そんな彼女に背後から声がかかる。

「ちょっと魔理沙、大丈夫?」

お札によるトラップと多数の弾幕を仕掛けた張本人、博麗霊夢である。

「すまない、かなりビビったぜ」

「全く、あんたらしくないわね」

霊夢はレイルの方を見た。レイルは激しい息切れを起こしていて、片膝をつくのがやっとだった。

「ヒューマの傷が応えたようね。これなら勝機はあるかも」

そういう霊夢だったが、魔理沙は不安げな顔をしていた。

「でもヒューマが二度も挑んで駄目だったんだ。ましてや早苗とアリスがいても敵わなかったのに、私達二人で大丈夫なのか・・・?」

「何言ってんの、私達がヒューマと戦って負けた事はあった?」

魔理沙はそう言われると、ヒューマがこの幻想郷に来てからの事を思い浮かべた。

ーー最初は異変の時だった。紫の頼みで異変の主犯者となったヒューマを、霊夢と二人でコテンパンにした。あの時はヒューマは弾幕初心者で、手応えすら感じなかった。

それから暫く、ヒューマはスペルカードルールにも慣れ、それなりの実力者にはだいぶ勝てるようになっていった。だが、霊夢と自分がヒューマと対戦して負けた事は・・・・・・。

「無いな、うん」

「でしょ?つまり実力は私達の方が上、あいつはちょっと戦い慣れしてる程度よ」

「死んで尚蔑まされるとは、気の毒にな・・・。あ、でもちょっとしょうがないかもな」

「それにね、ヒューマは生きてるわよ」

 

「・・・えっ!?」

魔理沙は一瞬脳内処理が後れた。

「ほ、本当なのかっ!?」

「本当よ。全くあいつもゴキ〇リ並にしぶといわよね。今度新聞で叩いてやろうかしら」

「文々。新聞にしとけよ。それと今、何処にいるんだ?」

霊夢は静かに、上を指差した。

「空?」

「あいつが幻想郷に来たときの話を思い出して・・・」

「ヒューマがか?文の話では、確か空から・・・」

「全く、今のは中々効いた・・・流石巫女さんだぜ」

二人が気付いた時には、レイルは拘束も外しダメージも何のそのというように立ち上がっていた。

「来るぜ、霊夢・・・!」

「いいえ、来ないわ」

「は?」

魔理沙は豆鉄砲を喰らった鳩のような顔で霊夢を見た。

 

ーー視界の端で、何やら黒い物質がレイルの頭部を直撃していたのを捉えた。