yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 51

「が・・・ぐう・・・」

霊夢は呻き声を上げ地面に倒れていた。傍らには自らの血で体が真っ赤に染まっているアリスと早苗がいる。

「ふん、博麗の巫女とは所詮その程度か。失望した」

「かっ・・・ひゅう・・・」

「お前はアザトースに任せなくても俺が始末してやる」

レイルは霊夢に背を向けた。

‘‘虚空「創造と破壊の混沌」’’

レイルの目の前に、どす黒い竜巻が現れる。今回は一つだけだが、先程出したものと比べ物にならないくらい大きく、また風速も速かった。

「もうお前を守る奴もいない。助けてくれる奴もいない」

「あ・・・あ・・・・・・」

霊夢は虚ろな目で竜巻を見た。その瞬間、霊夢を恐怖が支配した。

「さて、もうお前と話すのは飽きた。さっさと死ね」

「嫌・・・やめてっ・・・!」

霊夢が敵に命乞いをした。あの霊夢が敵に屈するなど、未だ嘗て無かった。

だが必死の懇願虚しく、レイルは霊夢の首根っこを掴み、竜巻に放り投げた。

「命乞いなど聞かない。耳障りだ」

「あ・・・あああ」

絶望。幻想郷の少女達にとってそれは無縁とも言える言葉。

しかし霊夢は痛感させられた。目の前に近付く‘‘絶望’’を。その絶望の前にはどんな抵抗も無意味だということを。

霊夢は顔を真っ青にしながら、竜巻に巻き込まれた。

霊夢・・・さん?」

その様を、偶然起き上がった早苗は見ていた。

「そんな・・・霊夢さんが・・・」

「ん?もう起きたのか。女の割には大した回復力じゃねーか」

早苗は思った。恐らく霊夢は助からない。ヒューマノイドがいない今、あの竜巻から逃れる術は無い。

霊夢さんは死ぬんだ。そこまで考えると早苗は霊夢と同様に顔を真っ青にした。次は私か、アリスか、いや、まとめて殺されてしまうのか。

誰かに助けを求める・・・。いや、この幻想郷に彼に敵うものはいない。彼の実力は八雲紫ですら軽く凌駕する。

もう、逃げ場は無い。

「まあ、その回復力が仇となったな。負傷してても動ける奴とそうでない奴じゃ、前者の方が圧倒的に厄介だから、優先して倒さなきゃだしな」

先に殺されるのは自分だった。早苗はその時「殺されたくない」という思いより「どうせ死ぬなら、早く死にたい」という思いが勝っていた。

その場で膝を突き、項垂れる早苗。

「諦めた、か。なら俺も鬼じゃない。少しでも楽に殺してやるよ」

懐から拳銃を出すレイル。ゆっくりと引き金に手をかけた。

 

 

 

バシュッ!

 

 

 

早苗は銃声だと思った。

 

だが、どこにも痛みはない。

 

早苗はレイルを見た。

 

レイルの背後にあったはずの竜巻が、跡形もなく消えていた。

 

「なっ・・・」

戦慄するレイル。銃を持つ手も震えていた。

「あの技が打ち消されるなんて、ありえん・・・」

 

「英雄は遅れてくる・・・だったかな?」

「その声は・・・ッ!」

その声の持ち主は竜巻とそう遠くない位置にいた。

そして霊夢を抱きかかえていた。

その人物とは、

ヒューマノイドッ!」

レイルにとっては死んだ筈のヒューマノイドだった。

「お前・・・心臓を貫かれた筈じゃ・・・?」

「再生した」

「阿呆か。能力は封じていた筈だ」

「私も知らん。とりあえず君の能力が無効になった」

「そうか、土壇場の奇跡ってやつか・・・」

レイルは暫く考えた。

窮地から舞い戻ってきたとして、ヒューマノイドが自分の能力を打ち破る何かを身に着けてきた訳ではない。引導はまだこちらにある、と。

「だがそれがどうした!?」

レイルは両手を広げた。

「死の淵から返り咲いて、それでどうするつもりだ?お前は俺の能力を打破する術を持っているのか?今度は俺を死の淵に立たす事が出来るってのか?」

「・・・」

ヒューマノイドは俯いた。

「何も言わないという事は、出来ないという事だろう!とりあえず仲間を助けなきゃという偽善精神で来てみて、後はその場の流れでどうにかしようなど、軽率過ぎるぞヒューマノイドッ!」

更に追い討ちをかけるレイル。が、

「あー・・・」

「めんどくせー」と言っている様な顔でヒューマノイドはレイルを見た。

「えっと、とりあえず霊夢ちゃんを休ませたいんだけどいいかな?」

さっきは俯いていたのではなく、ただ霊夢の状態を確認していただけのようだった。

「なっ・・・貴様真剣に聞いて・・・」

「あ、いいのか?それは助かる」

そういうとヒューマノイドは適当な位置に霊夢を寝かせた。

「大丈夫?霊夢ちゃん」

腸が煮えくり返るレイルをよそに、ヒューマノイド霊夢の治療を施し始めた。

「うぐっ・・・少し体が痛むわ・・・」

「その傷でよく少しでいられるな。ホントか弱い乙女(笑)だ」

「・・・この傷が治ったら封印してあげてもいいのよ?」

「おおっと、それは勘弁」

簡易的な止血が済むと、ヒューマノイドは逃げるように霊夢に背を向けた。

「ちょっと待ちなさい」

だがすぐに霊夢が呼び止めた。

何かされると思ったヒューマノイドは恐る恐る霊夢を見るが、飛んできたのはお札でも無く、弾幕でも無く、意外な言葉だった。

「ありがとう・・・ヒューマ」

霊夢から飛んできた、優しい言葉。

「・・・あー、今デレたって何も出やしないよ」

小馬鹿にするヒューマノイド。だがすぐに霊夢と向き合い、優しく霊夢のおでこに手を添えた。

「だがこの件の報酬としては、充分だ」

安心したのか、霊夢は眠りについた。

ヒューマノイドはその姿を見て優しく微笑むと、レイルと正対した。