yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 49

「『秘術「グレイソーマスタージ」』っ!」

溢れんばかりの星型の弾幕が辺りを埋め尽くす。それらは形を崩し、拡散しながらレイルを襲う。

しかしレイルは弾幕など気にも留めていなかった。それもそのはず弾幕はレイルの体に触れた瞬間消滅してしまうのだ。少女達が普段遊び半分で使用している技などレイルには通用しなかったのだ。

だがこれは、目眩ましに過ぎない。

霊夢さん!」

弾幕なら駄目でも、霊力を込めた大幣なら、と考えたのだった。

「はああああ!」

霊夢は大幣を一振りする。弾幕によって視界が塞がれていたレイルは、霊夢の急襲に反応できなかった。

ガチンッ!という音がする。

 

だが、霊夢の読みは外れた。天性の霊力をありったけ込めた大幣でも、レイルはびくともしなかった。

「なっ!?」

「不意打ちは褒めてやる・・・だが、非力なもんだ」

レイルは姿勢を低くし、拳を前に突き出した。霊夢は自慢の回避力で体を反らしかわそうとする。

が、予測力でレイルは圧倒的だった。腕が伸び切る前にレイルは軌道を逸らし、霊夢の頭を掴んだ。

「しまった!」

「ちと痛ぇが、我慢しろ」

そのまま霊夢を自分の体に引き付け、反対の手で腹を殴った。

「がはぁっ!!」

あまりの衝撃に霊夢は痙攣と脳震盪を起こした。

 「霊夢っ!」

すぐにアリスが駆けつける。

霊夢を返しなさい!」

「なら返すぞ。ほらよっ」

レイルは霊夢を投げつけた。

「っ!」

咄嗟の事でアリスは対応出来なかった。霊夢とアリスはそのまま衝突し、地面に転げ落ちる。

「いたた・・・大丈夫、霊夢!?」

「くっ・・・何とも言えないわ」

「っ!ごめん霊夢!」

「え、ちょ、何!?」

今度はアリスが霊夢を投げ飛ばした。

「何するのよアリ・・・」

態勢を立て直した霊夢が見たのは、先程の自分と同じようにレイル頭を掴まれているアリスの姿だった。

そしてレイルの掌にはエネルギーが圧縮された、自分達でいう弾幕が生成されていた。

「う・・・あ・・・」

弾幕ってのは、こんな感じでいいのか?」

「アリスっ!」

「はがっ!」

レイルが弾幕を突きつける。アリスは苦しそうに悶え始めた。

「ああ、ちょっと力入れ過ぎてしまったな。すまないな、まだ加減が分からなくて」

アリスは目を見開いたまま動かなくなった。相当なダメージ量だったんだろう。

「あんた・・・っ」

「どうした博麗の巫女、また守られてしまったね。異変解決とやらはお前の役割だったんじゃないのか?」

「残念ながらその手には乗らないわよ。私達の指揮官はそんなものに惑わされはしなかったもの」

「その指揮官も今は亡き者。そんな奴の真似事をしていちゃお前も死ぬぞ?」

「ご忠告ありがとう。でも人間はいずれ死ぬもの。死に方なんてどうでもいいわ」

「そうか。なら上の彼女はどう思ってるかな?」

「っ!!?」

レイルの姿が消えた。

「早苗!後ろ!」

「え・・・?」

霊夢が知らせた時はもう遅かった。レイルは早苗の背後から首に手を回し、思いっきり締め付ける。

「あ・・・がはっ!」

「早苗!」

「どうした?心配しているのか?人間いずれ死ぬのなら、こういう死に方もありだろう?」

「早苗は関係ない!」

「知らないね。お前ら猿は同じように見えるだろう?俺もお前らが全く同じにしか見えないんでね」

レイルが徐々に力を強くする。

「ぐえっ・・・げほっ・・・」

「やめなさい!」

「もう言い返す言葉が無いか。残念だ」

レイルが腕を振ると、早苗が地面に向かって思いっきり叩きつけられた。余りのスピードに霊夢は唖然とした。

「早苗!」

砂埃が晴れると早苗が岩に体を打ち付けている光景が目に映った。

急いで駆け寄る霊夢。顔を見ると、完全に目が上を向いてしまっている。

「あんた・・・、あんたぁ!」

「怒るのはよくないんじゃないのか?」

「もう許さない。私がお前を退治する」

「ふん。お前じゃ俺に掠り傷一つ付けられんよ」

「たあああぁぁぁぁぁああっ!!!!」

霊夢は大幣で薙ぎ払うように襲い掛かった。

 

 

一方。

魔理沙はやっとの思いである場所に辿り着いた。

「ヒューマ・・・」

目の前にはヒューマノイドの遺体があった。血塗れだが、安らかな顔で眠っている。

本当は幻想郷を守り切れず、無念だったろうに。

「う・・・っ!」

先程から感じていたが、いざこうして死体の間近になると死臭が酷い。初めて嗅いだとてつもない臭いに魔理沙は卒倒しそうになった。

だが、魔理沙は堪えた。この世で最も無謀な、ある望みの為。

「こんな私に出来る事はこれぐらいなんだ・・・。有り得ない事だとは分かっていても、やっぱりまたお前が何か凄い作戦を練ってるんじゃないかって、思っちまうんだ・・・」

服が涙で濡れている。鼻声になりながらも魔理沙は続けた。

「なあ・・・早く起き上がってくれよ!こうしている間にも霊夢が死んじまうかもしれないんだ。お前がいないとレイルには勝てないんだ!」

ヒューマノイドの顔に、涙が落ちる。

「頼む・・・頼むよっ!」

魔理沙はその場に座り込み、ヒューマノイドの頭を膝の上に置いた。口から零れる血が魔理沙の服に血が付着するが、気にしなかった。

「皆必死に戦ってるんだよ!なのにお前だけ先に死ぬになんて許さねえぞ!早く立って皆を・・・」

 

「皆を、助けてくれよっっ!!!」

 

 

 

 

 

ヒューマノイドの手が、僅かに動いた。