yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 47

魔理沙は、一目散にヒューマノイドに駆け寄った。

霊夢は、手に付いた血を見ながら俯き震えている。

早苗は口元を覆って涙を流し始めた。

アリスはあまりに凄惨なヒューマノイドの姿に、思わず目を背けてしまった。

 

「何やってんだ!早く肉体を再生しろよ!」

 

「駄目だ・・・彼は『自分が触ったものの能力の効果を無くす』みたいな理屈をこじつけたんだろう。能力を封じられてしまっている」

 

「なっ・・・嘘だ・・・っ、嘘だこんなのっ!!」

 

「すまない、魔理沙・・・」

 

「何でお前が謝るんだよ!お前は全力で私達と幻想郷を守ろうとしていた!この世界の住人じゃないのに!それなのに私達は何もやれてなくて・・・」

 

「何言ってるんだ、この皆よく戦ってくれたじゃないか」

 

「でも・・・お前が死んじまうなんて・・・・・・」

 

ヒューマノイドの口から、血が滴る。

 

「かはっ!ごほっ!」

 

「ヒューマっ!!」

 

「ゲフッ・・・。もう長くは、持たないみたいだ・・・」

 

「馬鹿野郎!そんな事言うんじゃ、」

 

「後は、任せ・・・」ガクッ

 

「っ!!?ヒューマ!?ヒュゥゥマァァァァァアっ!!!!」

 

ヒューマノイドの全身が地面に投げ出される。

 

「うっ・・・あっ・・・」

 

「もう嫌だこんなの・・・・・・。何でこいつが死ぬ必要があるんだよ・・・・・・」

「そんなもの、決まっている」

 

「・・・え?」

 

「弱いからだ。何千年生きたか知らないが、結局そいつは何も守れなかった、ただの人間だったということだ」

 

「お前・・・っ!」

 

「それで?お別れの挨拶とやらは済んだのか?」

 

「っ!こいつっ!」

魔理沙の怒りが一気に頂点まで達した!

「ヒューマをコケにしやがってぇぇぇぇえっ!!」

ミニ八卦炉を後方に構え、魔理沙はレイルに急接近した。

「ほう、怒りに身を任せ向かってくるか。そういう所が弱いんだよ」

魔理沙のスピードは十分な物だったが、レイルはそれを軽くあしらう。勢い余った魔理沙はバランスが取れず、態勢を崩した。

レイルの正拳突きが容赦なく魔理沙を襲う。

「があぁっ!!」

少女には重すぎる一発。骨の何本かが折れた音と共に魔理沙は宙を舞った。

「たかが誰かが死んだだけですぐに自己嫌悪に陥る!我を忘れる!お前らなど所詮本能に従う事しか出来ない動物に過ぎんっ!!」

恐ろしい速さで落下地点に入ったレイルは、落ちてきた魔理沙に強烈な膝蹴りを浴びせた。そして間髪いれず回し蹴りを顔面に叩きつけた。

「ああああっ!!」

周りの木々が衝撃の余波で粉々に砕け散る。強烈な一撃を受けた魔理沙は何度も岩に体を打ちつけた。

ようやく勢いが止まったのは十個目の岩だった。

「身の丈を知れ愚民。お前らのような軟弱な精神力ではこの俺をとめる事など出来ない。時期にアザトースが来るだろう。お前らは奴の前に絶望しながら死ぬしか道は無いのだ」

「ぐ・・・っ!」

魔理沙は尚も鋭い眼差しでレイルを睨みつけた。もう心身共にボロボロで戦う事は何より茶を飲む事もままならないような状態なのに、それでも魔理沙が敵意を絶やさなかったのは魔理沙の中で今まで感じた事のない感情が生まれたからだ。

それは、‘‘殺意’’。魔理沙は親しい友人を殺された恨みとその友人を散々罵倒された怒りで、『こいつを殺したい』と思うようになっていた。勿論魔理沙自身そんな事を考えてしまう自分が怖かったが、今はそんな事などどうでもよかった。こいつは人でありながら、人の命を何とも思っていない。それだけでも彼女に殺意が根付く理由として十分だった。

「殺す!殺す殺すころすコロす、コロス!!!!」

もはや魔理沙に自我は無かった。あるのは目の前の人物を殺すという目的だけ。いや、それこそもう人間だとは思っていないだろう。殺意は段々狂気に変わり、魔理沙を壊していく。

「アアアアァァァァァァァァァアッッッ!!」

何処からその力が湧いたのか、恐ろしい表情で魔理沙は立ち上がり狂気染みた目でレイルを見た。

 

「許サナイ!仲間ヲ、ヒューマヲ帰セッッ!!!」

 

魔理沙はレイルに襲い掛かった。

 

だが、体が動かない。

 

足元を見ると無数のお札が自分を拘束していた。

 

パチンッ!

 

そして、平手打ち。

 

驚いて魔理沙が前を見ると、そこには霊夢がいた。

 

「痛いな」

魔理沙、あんたしっかりしなさいよ。あんたらしくないわよ」

「うるせえ・・・早く拘束を解けよ」

「駄目だわ。今のあんたは危険過ぎる、解放する事は出来ない」

「・・・なんだよ、霊夢も同じ事を言うのかよ」

また魔理沙が鋭い目付きになる。しかし唯一違う点は、先程は敵であるレイルに向けたのに対し今は仲間であり今まで苦楽を共にしてきた筈の霊夢に向けている。

余りに鋭い威圧感に、霊夢は一瞬身震いした。

「お前も感情が云々言うのか!?目の前でヒューマが殺されたんだ!何をどうやって抑えろっつうんだよ!!?」

「堪えなさい魔理沙!今は感情に身を任せている場合じゃないわ!」

「何だよそれ、意味分かんねえよ!!お前はヒューマが殺されて悔しくないのかよ!?それともヒューマなんてどうでもよかったってのか!?」

「っ、ふざけた事言ってんじゃないわよ!!!」

パンッ!

また、平手打ち。

「そんな訳ないでしょう!?私だってヒューマを殺したあいつが憎い!許せない!でも今は感情に身を任せて命を粗末にするべきじゃない!!」

「私にはそんな事出来ない!あいつ殺す!じゃないとヒューマが安らかに」

「眠れないって!?冗談じゃないわ!ヒューマは何よりも感情に支配されてしまう事の恐ろしさを知っていたはずよ!!」

「っ!」

「あいつは華扇と修行して自分に何が足りないかを必死に探していた。そして答えは感情を支配する術を身に着ける事だった。感情任せになり短絡的な行動を取る事の愚かさをヒューマは誰よりも理解していた!もしヒューマが今のあんたの姿を見たら何を思うのよ!?」

「はっ・・・」

「答えは一択、『助けなければ』って思うはずよ!目の前で過去の自分と同じ過ちを犯そうとしてる人をヒューマが見過ごす訳がない!」

魔理沙霊夢とは長い付き合いだが、霊夢がここまで何かに対し熱くなる様を見た事がなかった。それだけヒューマという友人の死は、彼女にとって大きい。自分と同じくらい辛い筈だ。誰かに慰めて欲しい筈だ。だが彼女はそういった感情を押し殺してまで魔理沙の、親友の過ちを正そうとしてくれている。それなのに自分は自分の事しか頭になく、周りが見えていなかったーー。

「すまない霊夢、私どうにかしてたぜ」

「分かったならいいわ。でもあんたその怪我じゃもう戦えないでしょ?後は私達に任せなさい」

「いや、でも」

「そうよ、休みなさい魔理沙

気が付くと魔理沙の後ろにはアリスと早苗がいた。

「無茶をするのは良くないわ」

「大丈夫です!私達は絶対に負けませんから!」

「だそうよ。分かったわね?」

「お前ら・・・本当に済まない・・・」

魔理沙は泣き崩れた。

 

 

「おや、さっきの嬢ちゃんは来ないのか」

魔理沙はリタイアしたわ。これからは私達三人で行くけど、嘗めてかからないで頂戴ね。後で後悔しても知らないわよ」

「空元気は良くないぜ?死んでもしらねえぞ?」

「・・・行くわよ、二人とも」

「おーけー」

「はい!」