yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 45

「『霊符「夢想封印」』!!」

霊夢はスペルカードを唱えた。

発動と同時にお札やら大小様々の弾幕、更には巨大な陰陽玉まで展開する博麗霊夢きっての大技。そんな技を序盤にいきなり使用するのだから、如何に普段本気を出さない霊夢が今回に限って真剣にやっているかが窺える。

「援護するぜ!『恋心「ダブルスパーク」』!!」

そしていつも全力の魔法使い、霧雨魔理沙もいつも以上に本気だ。自身の大技、『マスタースパーク』を二つ同時に放っているようなスペルをいきなり使用する。

弾幕初心者であるレイルは一瞬戸惑った。霊夢の本気の高密度弾幕に加え、自身に向けて発射される魔砲。勿論避けれるはずはない。

「ふん」

そう思うや否や、レイルは片手を前に突き出した。

するとどうだろう。魔理沙八卦炉は出力を失い、霊夢弾幕はそれまでの方向とは逆向きに進んでいった。

「なっ!?」

その弾幕霊夢魔理沙のみならず、後方にいたヒューマノイド達にも襲いかかった。

「おい霊夢!何で弾幕の方向変えてるんだ!?」

「私にもどうなってんのか分からないわよ!『境界「二重弾幕結界」』!!」

霊夢は大技を惜しみなく使う。今度は周囲を結界で覆い、一つの防護壁を作る。霊夢はその壁で向かう弾幕を一つ残らず消滅させた。

「ああもう!結構上位のスペカだったのに・・・」

「今はスペルカードルールに縛られる必要はない!思う存分やってくれ!」

ヒューマノイドは相手の懐に飛び込んだ。

「相手の実力も分からないのに突っ込んでくんのか」

「私の格闘術の中で、よく分からない理屈を考える暇があると思っているのかい?」

この世の全人類の中に近接格闘術において彼に並ぶものは、殆どいないだろう。普通の人間の一生以上の時間を戦いに費やしている彼には、確かな経験と年季がある。

レイルはその事を理解していた。それでも尚、余裕を持っていた。

「残念だが、既に考えておいた」

刹那、いや刹那どころではない。ヒューマノイドはミクロ単位で全く動いていない。だがその間にレイルは頭部、腹部と打撃を入れていた。

ヒューマノイドは訳も分からず吹っ飛んだ。痛みが襲ったのは、その後だった。

「くっ!(速い!しかも重い!これが奴の力か・・・ッ!)」

「『俺は天狗の数倍ものスピードと鬼の数十倍もの腕力を持っている』、という理屈を持ってして今お前を殴った。これが俺の能力の力だ」

「勝ち誇るのはまだ早いんじゃない?」

レイルがその声に反応し周囲を見ると、無数の糸のようなものがはりめぐられていた。そしてその先端には、人形がくっ付いている。

よく見ると全ての人形が、爆弾を抱えていた。

「『魔操「リターンイナニメトネス」』」

人形が一斉にばら撒かれ、各々爆発した。これもアリスの代表的な弾幕といえるであろう。『本気で戦うと負けた時に後がない』と自ら述べるアリスもまた、本気で幻想郷を守る覚悟は出来ていた。

ヒューマノイドの対応に気を取られていたレイルは、突如襲いかかってきた人形達に対処出来ていなかった。レイルの周囲が粉塵に包まれる。

「やったか!」

「いや、まだだ。この程度で終わる程の男じゃない・・・」

五人は尚も身構えた。辺りは静寂で包まれる。

「くるわね・・・」

砂埃が段々と晴れる。五人が神経を尖らせ見つめる先には・・・。

「っ!いないっ!?」

レイルの姿は無かった。

「どういうことだぜっ!?」

「そんなことより皆臨戦態勢を!」

ヒューマノイドの合図と共に五人が互いに背中を預ける形で、小さな円を作る。その陣形は三百六十度全方位が見渡せる完璧なフォーメーションだった。

より一層集中する五人。しかしいつまでたってもレイルは姿を現さない。いつくるかも分からない敵に五人は固唾を飲むーー。

「きゃっ!」

突如早苗が悲鳴を上げた。

全員がその方向を見ると、なんと早苗が地面に吸い込まれていく。足元には人間の手が。

「早苗っ!」

「マズいっ!」

ヒューマノイドが咄嗟に早苗の手を掴んだ。しかしレイルの圧倒的な力にヒューマノイドもろとも吸い込まれ・・・

「と、いうのは嘘だ」

ヒューマノイドは地面に手を当てた。四人にはヒューマノイドが何をしているか分からなかったが、勿論ヒューマノイドの行動には意味があった。

「あのフォーメーション、死角となるのは円の中心部分だけ。そして上空からだと気付かれてしまうので、地中から奇襲をかけるのが普通だ。そしてそれを予測できない私ではない」

早苗を引っ張る手の動きが止まる。ヒューマノイドは地中に、ロンズデーライトの槍を刺していたのだ。

「よし、引っ張るぞ」

ヒューマノイドは体半分地面に埋まった早苗を引っこ抜いた。

「あ、ありがとうございます!」

「安心するのはまだ早い。次またどんな手を使うかも分からない・・・」

「流石だな」

「っ!」

五人の視界の先に、レイルの姿が映る。

「お、お前!」

「やはりな」

ヒューマノイド、お前はこうも思っていたはずだ。「奴ほどの熟練者が、こちらの狙いに気付かない訳はない」と。正直さっきお前が警戒を怠っていたら、お前ら全員首だけになっていたかもな」

「今でも首だけにすることは出来るんだろう?君の能力でさ」

「それじゃつまらない。お前達には自分の無力さを噛み締めながら、絶望しながら死んでいってもらう」

「そんなことをしていると足元をすくわれるぞ」

「それはそれで面白い展開じゃないか。それにお前の首を飛ばしたところですぐ再生するんだろう?」

「成程。君の能力は自分自身にしか効果がないようだな」

「よく分かったじゃないか。今の会話で分かったのか?」

「他人にも干渉出来るなら、とっくに君お抱えの部隊は無敵艦隊になっているじゃないか」

「おみごと!これは楽しめそうだ」

レイルは称賛しているのか馬鹿にしているのかよく分からない態度でヒューマノイドに拍手を送った。

「ん?おっと・・・」

しかし実際には拍手はしていなかった。ヒューマノイドを除く四人は、その姿を見て絶句した。

レイルの右手首から先が、無残に血を垂らしながら無くなっていたのである。

「なっ!あんた・・・・・・!」

少女達には余りにも刺激が強すぎた。元々決して気の強くない早苗に至っては、吐瀉物を出してしまった。

「み、右手が・・・」

「ちょっとそういうのはやめてくれないか?この子達はそういうのに慣れてないんだ」

「これは失礼。さっきの爆発で飛んで行ってしまったみたいでな」

「よく回避出来たもんだ。んでその飛んでいった手首が早苗ちゃんの足に掴みかかっていたんだが」

ヒューマノイドは、さっき地面から手が出てきた位置を親指で示した。そこには、ロンズデーライトの槍が貫通しているレイルの右手があった。

「これは酷い扱いをしてくれたな」

「右手だけ動かす君が悪いんだ。ホント気味が悪い」

「駄洒落を言う余裕がまだあるのか」

レイルは右手を引っこ抜き手首にはめた。普通なら勿論治るはずはないのだが、レイルの右手は普通にくっつき普通に動いた。

「そろそろちょっと、本気だしちゃおうかな」

レイルは両手を地面にあてた。するとレイルの足元に直径五メートル程の魔方陣が生成され、白く光出した。

 

 

 

 

 

「『虚空「創造と破壊の混沌」』」