yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧が40話になるなんて思いもしなかったよ。

「ふ、ふざけたことをぉぉぉおっ!!」

アシッドは手を前に突き出す。

その動作に呼応しアシッドの周りの酸が魔理沙を溶かしてくれると言わんばかりに発射された。

「甘いぜっ!」

魔理沙は半ば余裕の笑みを零しながら放たれる酸を軽々と避ける。

(ならば、もう一度酸の壁で!)

放たれた酸が百八十度の方向転換をして戻ってくる。それらは魔理沙の周辺に集まり、徐々に先程と同じような壁を形成していった。

(さっきのダークスパークで魔力は一時的にだいぶ削がれた筈!今度はすぐに溶かして・・・)

「余裕綽々なんだぜ!」

アシッドの策も虚しく魔理沙は既に箒のブラシにミニ八卦炉を取り付け、酸の隙間を縫って脱出していた。

(さっきよりも格段にスピードが上がっている!!?)

天狗とまではいかないが、今の魔理沙はそれまでの人間の技術では成し得ないようなスピード、火力を顕現させていた。それは魔理沙の可能性が開花し、魔理沙がミニ八卦炉の可能性を開花させた証拠でもあった。

魔理沙自身もその成長振りに驚きと確かな手応えを覚えているだろう。

「くそ・・・僕がこんな、安住の地でのうのうと暮らしてた奴に負けるかァッ!!!」

今まで戦場で命を張ってきた。仲間の死も見てきた。その中で生き抜いてきた。それなのにどうして目の前の少女に勝てないのか。

アシッドは、たった今目の前で劇的な成長を遂げた少女に対する嫉妬の念と、畏怖の念で一杯一杯だった。

それは魔理沙の終わらない可能性を肌で感じ取ったからであろう。

「『魔符「ミルキーウェイ」』!!」

魔理沙を中心に大小様々な星型の弾幕が、回転しながら展開される。

(そうだ・・・例え威力が上がっても酸の前には大した脅威じゃない・・・)

「その程度がどうした!魔法使いッ!!!」

アシッドは四方八方に酸を飛ばしまくる。それは狙いも何もあったものじゃないが、弾幕に触れたものは確実にその弾幕を消滅させた。

「ははっ!ちょっと成長したからっていい気になるなよ!!」

 

次の瞬間だった。

 

アシッドの目の前で酸が弾幕に触れた。

 

弾幕が溶けて無くなる。

 

その影には、ミニ八卦炉を構えた魔理沙がいた。

 

「・・・え?」

 

「ファイナルスパァァァァァアアァァクッッ!!!!」

 

アシッドの目前で放たれた魔砲は、

 

アシッドを巻き込み、

 

周辺を更地にした。

 

 

 

 

 

「・・・っ」

アシッドが目を覚ます。

体を起こそうと上半身に力を入れるが、激痛が走る。

「負けた・・・のか?」

視界の端で大地が抉られている様子を確認した。

「・・・ふう」

アシッドは四肢を投げ出した。

自然豊かな幻想郷特有の、澄み渡った空が目に写る。

なんて、平和な地だろう。

 

突然、視界にモノクロの服を着た金髪の少女が飛び込んでくる。

「お目覚めか?」

うわあ!とアシッドが飛び上がるとまた体に激痛が走る。魔理沙は慌てて体を支える。

「・・・」

「・・・」

 

「な、何だぜそんなに見つめて。顔に何か付いてるか?」

「あ、ああ。すまない。・・・」

「・・・」

 

「・・・え?何もしないのか?」

「ちょ、それどういうことだ!?そんなに私が変態に見えるか!?」

突然魔理沙が赤面する。きっと変な解釈をしたのだろう。

「いや、そういう事じゃなくて・・・トドメとか、刺さないのか?あ、捕虜にする感じ?」

戦場では、戦闘不能になった兵士は殺されるか捕虜になるかどちらかの手法で処理される。悠々と自分の陣地に帰れることは無いだろう。しかし、この幻想郷では、

「トドメ?捕虜?何でそんなことしなければならないんだ?」

このように、負けても見逃される事の方が多い。

「え?え?いやいつまた僕が復活するか分からないし・・・」

「知るかそんなもん。そん時はまた叩き潰すから大丈夫だ」

「ゑ・・・」

「ま、お前らの世界では知らんがこの幻想郷ではそういうのは許されるのが当たり前だ。心配しなくてもいい」

「そうなん、だ・・・」

近くでアジとマインドが戦っている音がなる。魔理沙はアシッドの隣に座り込んだ。

「私ももう疲れたぜ。ちょっくら休憩しますか」

さっきまで殺し合いをしていた筈の相手が、何の気なしに隣に座り込む。

今までの戦いでそんなことはある筈もなかった。この余裕、そして包容力。長く戦場で戦ってきて、失ってしまったものがそこにはあった。

(これが、純粋な勝負か・・・)

「・・・すー」

「ん?何だ寝たのか。ったく乙女の隣で堂々と寝やがって」

何時間もの疲労が祟り、アシッドは深い眠りに堕ちた。

その表情は安心したのか、いつもの笑みとは違う温かい笑顔だった。

 

 

 

 

 

(何だコイツ女の子の隣で満面の笑みで寝るとか・・・)

魔理沙はドン引いていた。