紳士と吸血鬼伯爵
※この小説は一部堕華さんやスフォルさん、クトゥルフさんのオリキャラ及び設定を流用しています。
興味のある方はどうぞこちらへ↓
クトゥルフ→cthulhu (id:so-nanoka-9)
では本編をどうぞ
*
私の名前はヒューマノイド。普通の紳士(自称)だ。
紳士である私は、ご近所さんに挨拶するのは常識のところだ。今回もティユエルという吸血鬼の祖(本当)である方に挨拶がてら、交友関係を築き上げたいと思っていた。
私は紳士であるから、どんな性格の持ち主でも無難に対応出来る。
そう、例え、
「心の清い、幼き童の血が飲みたいな」
こんないきなり無理難題を押し付けてくる方でさえ。
「・・・はい?」
聞き間違えか?いや、そう思うってことは絶対言った。100%言った。
「いや、純粋な幼児の血が飲みたいと」
ほら言ったよ!私は幼児はおろか、大の男でさえ血を奪うなんて事はしないんだぞ!紳士だからな!((
いやかといって近隣の方の頼みごと。紳士としては叶えてあげないといけないな。
って無理無理無理!やっぱそんな理由もなしに幼児に怪我を負わすなんて酷なこと私に出来る筈が無い!それこそ紳士の道に反する!いや下手したら人間の道に反する!
しかしどうする?ティユエルさんは見た感じプライドの塊だ。間違えても頼みごとを「無理です(キッパリ」なんて断ったらまるで自分が下に見られていると思って生きて帰さないだろう。流石に4000年も生きてきてこんなところで無様に死ぬのは御免だ。しかし幼児を傷付けて無様に生きるのはもっと御免だ・・・。
ええい、ここはおおいに断ってやろう。相手のご機嫌を取るだけでは男として廃る。そうだ、相手は見かけはこんなにも幼い少女じゃないか。実年齢こそ年上だが。
「おい、どうした?聞こえているか?」
よし、断るんだ。そうと決まったら・・・
「それで、答えはどうなんだ」
「はい!出来る限り全力で努めさせていただきます!」
何言ってんだよぉぉぉお!!!
いやアテはあるのかよ!?「貴方の血下さい(ニコッ」って言って「はい、どうぞ!(スマイル」ってすんなり返してくる相手が何処にいる!?否、絶対いるはずない!そんなキチガイじみた幼児なんているわけない!ってかそんな子清くない!
終わったよ・・・。人生終わった。もうこれから私は紳士なんて名乗っていけない。むしろ罪の無い幼児を傷付けた罪で人々に忌み嫌わてくのだ。ああ、これから何処に住めばいい。リルアちゃんのところの帝国は無差別に幼児を傷付けた者等向かいいれる筈が無い。なら人間の里は?いや無理がある。そんなことをして里の人々と仲良くやっていける訳が無い。霊夢ちゃんや魔理沙ちゃんはプライバシーがあるし・・・。
はぁ、出来る事ならもう帰りたい。ちょっとキチガイじみた人ばっかだけど心優しい人達が集まる我がギルド、レギオンズに帰りたい。彼らは向かいいれてくれるだろうか・・・。
む?レギオンズ?そうかあの子達なら!
「ってことで血を分けてくだs」
「却下」
リトルエラー君とリトルGちゃんに交渉してみたが、両親によってあえなく玉砕。ヒューマノイド終了のお知らせ。
「そもそも何でこの子達になるんだ。俺の子がキチガイってか」
この人はエラー君。レギオンズでは結構古株で、周囲の認知度も高い。
今は鬼のような形相をしているが、これでも2児のパパである。
「本当ですよ!失礼極まりない!」
そしてその彼女(ってか妻だろ)のGちゃん。エラー君とほぼ同期で、その仲も結構良いどころか付き合っちゃってる。更には営んで以下略。
レギオンズの看板娘みたいなもので、その姿を見ただけでギルドの男なら絶対に口元がニヤついてしまうという伝説を持っている。多分。
「まさか!私は純粋な幼児の血を求めているんだ!つまりは君達の子供が純粋だと私が評価しているということだ!」
「じゃあなんでこの子達なのです。他にも子供なんていっぱいいるじゃないですか」
Gちゃんとエラー君がゆっくり近付いてくる。この圧力、この夫婦出来る!
「いや・・・そのですね・・・」
言えるわけない。その子達を選んだ理由がゴニョゴニョ・・・なんていえるわけ無いじゃないか。ここは憲法で認められている通り黙秘権を発動し・・・。
・・・糞!完全に目が「言わなかったら問答無用で殺す」って目してるよ!言っても負け、言わなくても負け。ああ、世界はなんて理不尽なのだ・・・。
しかし私がとる行動は一つ!『勇気を出して理由を70文字以内で述べる』ッ!!やったとしてもどうなるか分からないが、やらなかったら確実にダメ。だったらほんの僅かな希望でもやってみるべきだとどっかのお偉いさんが言っていたからな!
「えと・・・子供がキチガイなんじゃなくて・・・」
勇気をだして言葉を紡ぎ出せヒューマノイド!親御さんの圧力が大変なものになっているが気にするな!
「両親がキチガイだからギリ許してもらえるかなt((
バチコーンッ!
「どうせそんなんだろうと思ったよ。ったく、口調は変わっても性格は変わらねーな」
「貴方には『失礼』の意味が分かっていないようですね。なんなら私が教えてあげますよ?子供達と一緒に」
言えなかった部分を除いて21字。テストだったら確実にアウトだわ。いや私の場合人生的にアウトだけど。
「そうとなると処刑だな」
エラー君が私の首を(全力で)掴み、処刑台(教室)に連れ去ろうとする。
いつしか見た某学級裁判ゲームの〇田怜恩君はこんな気持ちだったのか。と絶叫しながらしみじみ思った。あ、新作いつなんだろうアレ。
ずるずるずるずる、私は廊下を引きずられていく。通りすがる比較的新参のメンバー達が「おい・・・あれってヒューマさんじゃね?」「ああ・・・確か隊長だった経歴もあって、今では初代の許可つきで支部をやっているとか・・・」「何でそれ程の人がエラーさんに引きずられてるんだ?」「あの人は(も)滅茶苦茶な人だったからな・・・何かかんに触るようなことをしたんだろ」等、私が引きずられている事に対して各々の考察を巡らせる。中には馬鹿にしてる奴もいた。
だが、知った事ではない。それ程のことで紳士たるもの怒りはしないし、何より今は命の危機だ。構っている暇など無い。
ああ誰か、無様で不甲斐ないがそれでも何百人もの命は救ってきたこの清き紳士を守りたまえ!ほんの少し、手を差し伸べていただけるだけで結構です!何かご慈悲を・・・。
「おい」
キターーー!神のご慈悲キター!有難う神様、大いに感謝致します!これからは私も心を清くし、一層自らの使命を果たしていきたいと思います。何はともあれこれで4000年の努力が報われました!後はリトル達以外の誰かから生き血を分けてもらえば・・・。
さあ、神のしもべよ!今こそその力を奮い純粋な私を抹殺しようとするこの罪人を裁きたまえ!
「お前、久々に来て何やってんだ?」
「」
その声、その顔。私は知っている。確か彼はギルドで色々あって初代であるスフォルさんが居なくなったとき、私が主催した『第一次ギル長選挙(仮名)』で満場一致の次期団長に就任した人だ。
とりあえず威圧感が半端無くて、その声を聞くだけでギルドの多くの者が怯え、その顔を見るだけでギルドの多くのものが下手にでるという。そんな伝説の最強戦闘員兼団長。
「ギ、ギーグs・・・団長」
ギーグ・デュランダル(だったかアトランタルだったか忘れた)。もしかしたらこの状況で一番会ってはいけない人物だったかもしれない。とりあえず今の私には嫌な予感しかしない。神のご慈悲とは何だったのか。呪ってやる神め。
「いや実はね・・・」
「待ってエラー君せめて心の準備だけでもおぅふッ!」
強烈な右ストレート。畜生硬化させとけばよかった。
「成る程、そういうことか・・・」
エラー君は事の全てを団長に話してしまった。団長の顔つきが真剣なものに変わったのはじっくり見ないでも分かる。
これを言うのは今日何回目だろうか。これでもう正真正銘の人生終了だ。私は生き延びるために、そしてなるべく手を汚さずに血を採取しにきたが・・・。どうやら高望みしすぎたようだ。『二兎追うものは一兎も得ず』まさにこの通りだ。もう私に生の選択は残っていない。死の前に何かやり残した事は・・・。
しかし団長は既に目前まで歩いてきてしまった!それにしても何て威圧感!普通の人間なら今頃パンツを濡らしているだろう。無様な姿で死なないだけましか・・・ッ!
団長が腕を振り上げた!あれか、「拳で語り合おう」みたいな熱血漢的アレかっ!?いや団長はそんなキャラじゃないはず・・・とにかく私の命が危ない!いやもう手遅れだ。目を瞑って現実逃避してやろう。
「ッ!」
・・・あれ?殴ってこない。いや余りの痛みに体が感知しないまま天に召されてしまったのか・・・?ちょっと目を開けて・・・。
「・・・団長?これは?」
私の目の前にはなにやら赤い液体が入ったビーカーが。上の方には『1リットル』と書いてある。
「『血』が欲しいんだろ。やるよ、コレ」
「いや、あの、『1リットル』って・・・こんなの何処から?まさか・・・」
「そのまさか、な訳ないだろう。今さっきギルドでベッドから転落した子がいてな・・・大量出血を伴いながら何とか一命は取り留めた」
「1リットル出血して一命を取り留める子供!?何ですかその半端ないギャグ漫画属性ッ!?」
「ま、ある意味純粋な子だし良い飲み物になるんじゃないか?」
「・・・」
ラッキーーー!!流石団長レベルだと器が違う!そこに痺れる憧れ((ry
「ま、お前もアイツの許可あって支部をやるんだ。せいぜい頑張るこった」
何か今励まされた気がするけど全然聞いてねぇやッ!!しかしまぁいい。これで私は手を汚さずにご近所さんの機嫌を損なわずに済む、まさに『一石二鳥』ッ!!団長、私の石となってくれて感謝する!そうとなれば早速ティユエルさんに会いに行くぞーーッッ!!!
「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぃぃやぁぁぁぁああ!!」
とにかく私は全力で走った。
「・・・行っちまった、なんてスピードだ。人間頑張ればあんなに速く走れるんだな」
「アイツも用が済んだんだ。事はなるべく急いだ方がいいだろう」
「・・・ところでギーグ。さっき言ってたベッドから転落した子って・・・」
「・・・リトルスリープの事だが?」
「やっぱり・・・。大丈夫なのか?あの子は少なからずスリープの特性を引き継いでいるんだ、血液を飲んで見たら段々眠くなって、ティユエルって奴に『睡眠薬を使ったな・・・ッ』なんて言われたらどうすんのさ?」
「それは・・・
知った事じゃない」
「だよな・・・」
よし、何とか純粋な幼児の血液は持ってきた。これで上機嫌間違いなし!
って思ってた時期が私にもありました。
「段々眠くなってきた・・・まさか貴様睡眠薬を入れたなッ!?」
「・・・へ?」
知らねぇよぉぉぉぉぉおッ!!私は用意された血液をそのまま持ってきただけ。睡眠薬なんて入れてない!まさか団長が!?確かにあの人ならやりかねない。いや、考えろ。あの超絶めんどくさがりで何事にも関心を向けない団長がいちいちこんな悪質なことをやる筈が無い!ならばいつどこで睡眠薬が入った?いやいや、絶対何処でも入ってない。私の守備は完璧だった。粉末どころかネズミ一匹入る余裕すら・・・。そうか!血液自体に問題があったのか!これなら合点がいく。最初からその血液に何か眠くなる成分みたいなのがあったんだ!
・・・ってどういう事だよっ!?飲むだけで眠くなる血を持つ人間って何ソレッ!?どんな設定!?絶対いらねえだろ!!!そんな眠気の化身みたいなの・・・。ん?眠気の化身?・・・スリープ君・・・。
リトルスリープッッッ!!!!!!そういう事か!確かにあの子なら!周囲の人間を眠くさせてしまうというレギオンズのある意味チートキャラッ!そのリトルver.であるあの子なら確かにありえる!ふー、謎が分かってスッとしたぜー。
「・・・何故そんな清々しい顔をしているのかは分からんが、相応の罰は受けてもらうぞ。」
「ゑ?」
「睡眠薬程度で私を貶められると思ったかっ!!」
「いやすいません誤解なんd
その後幻想郷に起きた爆発は大地を揺るがし、巫女の元にまで聞こえた。
あまりの轟音に異変と勘違いした巫女と野次馬魔法使いはティユエルの元へ飛んでいったが、そこで見つけたのは変わり果てた姿となったヒューマノイドだった。
ティユエルが事の真相を話し事態は収まったが、ヒューマノイドは二人に見向きもされないまま放置されティユエルの拷問部屋行きとなった。
目を覚ましたヒューマノイドはそこが拷問部屋だとすぐに悟り脱出を図るがティユエルに見つかりあえなく撃沈。磔刑を施行され僅かな体力で真実を話すとティユエルはヒューマノイド以外にも非はあったと寛大な心で理解し、ヒューマノイドは一週間城中の雑用を一人でこなすだけで済んだ。
またその血液は眠くなる効果こそあったものの味はすこぶる良かったらしく、気に入ったティユエルはその日の夜に全て飲み干した後寝床にに入り、いつもより快眠が出来たとさ。
めでたしめでたし。
「・・・ヒューマノイドとやら、お前結構雑務が得意なのだな。是非私の部下に」
「勘弁してください」