yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 35

「妖怪だって!?他の世界から妖怪が来てるのか!?」

「何も不思議ではないだろう、幻想郷の様な世界が他にあったところで」

「で、何の妖怪なんだ!?」

「それは・・・」

アジはそっと空を見上げた。

 

 

ヒューマノイドは腰の辺りから二丁拳銃を取り出した。

ーーデザートイーグル。誤った扱い方をするとどんなに腕っ節の良い屈強な男でもバランスを崩してしまう程の反動に対してハンドガンの中では抜きん出た威力を誇り、使い方のセオリーさえ間違わなければボディアーマーを貫通出来るほどの強さを持つ。

ヒューマノイドはそれを片手に一丁ずつ持った。

「本気で殺すつもりなのだな」

「さぁどうかね。生かすも殺すも君次第ってところか」

ヒューマノイドは容赦なく発砲した。多少の距離があった為マインドはギリギリで回避できたが、その隙にヒューマノイドはマインドを射程範囲内に入れた。

「ッ!」

マインドは咄嗟に首を横に傾けた。刹那、銃声と共にマインドの頬に掠り傷が出来る。

「間一髪ッ!」

マインドはそのままの態勢で投げナイフを放った。

直接殺すためではない。ヒューマノイドの注意をそちらに向け、その隙に距離をとろうと図ったのだ。

そしてマインドの思惑通り、ヒューマノイドはそれを避ける為に身を屈めた。あの態勢ではデザートイーグルは撃てない、そう読んだマインドはヒューマノイドに背を向けて離れようとした。が・・・。

「うぐっ!?」

マインドの後頭部から額にかけて一直線に風穴が開いた。驚いたマインドがヒューマノイドの方を向くと、ヒューマノイドは銃を水平方向に傾けて撃っていた。

いわゆる馬賊撃ちである。ハリウッド等では反動を横方向等にずらす事によって複数の敵の掃射に役立つと言われているが、実際には銃の制御が出来ずに弾をばら撒くだけの威嚇射撃にしかならない。

しかしヒューマノイドは違った。肩から先の筋肉だけで、ただでさえデザートイーグルの馬鹿でかい反動を押さえつけていた。普通に構えるより早い手順で狙撃したので、マインドが射程距離から離れる前に頭部を狙撃出来たのだ。

「うぐ・・・っ」

マインドは地面に向かって倒れていった。頭から大量の血を流しながら。

「・・・」

「おい、ヒューマ!やったのか?」

魔理沙が近寄ってきて、その後ろにアジ、リーザと続く。

マインドは森に隠れて見えなくなった。しかし尚、ヒューマノイドは鋭い眼差しを向けたままだ。

「どうしたんだ?そんなに険しい顔をして」

「・・・彼の生死を確認しよう」

「え?」

ヒューマノイドは一足先に地面に降りていった。

「何なんだぜ?あいつ」

「やはり・・・ヒューマももう気付いていたか」

「それってあいつが妖怪だったって事をか?」

「その通りだ。着いて来い魔理沙。まだ油断は出来ない」

 

 

地面に降り立った魔理沙が見たものは、この世の現象とは思えないものだった。

「な、何だこれ!?」

マインドの遺体に向かって肉塊が独りでに移動しているのだ。

その肉塊はマインドの腹部、そして頭部にくっつき、マインドと一体化した。

「やはりな・・・ヒューマこいつは」

「ああ、間違いないね・・・

 

こいつは河童の一種、ワロドンだな」

肉塊が完全にマインドに同化すると、マインドはゆっくりと立ち上がった。

「河童?にとりの仲間か?」

「あぁ。だがまるで厄介さが違う。ワロドンは河童が山に入った、つまり『山童』の仲間で普通の河童の何倍もの生命力を持っている。ワロドンはどんなに体をバラバラに切り刻まれても元の体となって生き返るとされ、馬の足跡に溜まった水の中に数千匹もの大群が住み着くと言われている。身長は一メートル程だが、実際には水溜りにも生息出来るように体の大きさを自由に変化可能。唯一倒す方法としてワロドンの肉塊を少しでも口にすればワロドンは再生出来なくなり死に絶えるという。が、あまりの不味さに動物達も避けて通る程だそうだ」

「何だ、そこまで我の正体を知っていたとは」

マインドは再生した肉が体に馴染むかどうか確認するかのように首をポキポキッとならした。

「如何にも我は妖怪、ワロドン也。この姿を見せてしまった以上、汝らには覚悟して貰わなければならぬ」

「覚悟はいいが、一対四人で何をするつもりだ?」

アジが一歩前へ踏み出した。

「一人?ふふ、笑わせるな」

「何だと?」

「まだまだいるぞ、我の手駒(コレクション)が」

その瞬間、一番後ろにいたリーザが何者かに襲われ、木に打ち付けられた。

「ぐあッ!」

「リーザ!」

魔理沙とアジは身構えた。正体不明の敵に備え。

その敵はリーザを攻撃したあと、木々に飛び移って姿を撹乱させた。素早い身のこなしに二人は翻弄され、いつ来るかも分からない敵に恐怖感すら覚えていた。

「速い・・・速いぜ!」

(くそ・・・どこから来る。上か、右か、左か・・・)

その時木にもたれかかっていたリーザが叫んだ。

「アジ!後ろだ!」

「なっ!?」

その声に反応したアジ。しかしアジが振り向いたときには敵は殴りかかって・・・。

「しまっ・・・」

パシッ。

聞こえてきたのはそれだけだった。

 

 

「先程から全く連絡がとれないと思っていたら・・・まさか貴方までやられているなんて」

アジの目の前で拳は止まった。横ではヒューマノイドが敵の腕を掴んでいた。

アジはうろたえはしなかった。しかし目前に据えられた拳に、何らかの重圧感を感じていた。

「な・・・」

「流石ですよ、師匠。悪竜であるアジちゃんさえもその重圧感の虜にしてしまうなんて」

ヒューマノイドはパッと腕を放した。

「ねぇ・・・華扇師匠?」