yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 25

「プルルッ!プルルルッ!」

それはヒューマノイドが普段つけているスライドヘッドホンから流れた音だった。勿論外部には漏れていない。

萃香ちゃん、ちょっと耳を塞いで後ろを向いてくれないかな?」

「おー分かったー。鬼は約束は破らないからな」

萃香は言われた通り耳を塞ぎ後ろを向いた。

それを確認したヒューマノイドはスライドヘッドホンを弄った。何らかのスイッチがついているのだろう。

カチッ、という音と共に無線が繋がった。相手はヴァルドだった。

「やぁ、何の用だい?」

「恐らくアンタも察していると思うが、ボスの側近二名がそちらへ向かった」

「察しの通り察しているよ」

「やめろ紛らわしい」

「すまそ」

「それにしてもアイツらはこちらに内通者がいることに勘付いたらしい。ボスにも誰にも行き場所を告げずに出撃していった」

「君ということはばれていないのか?」

「俺をなめてもらっちゃ困る。しっかりやっているさ」

「油断は、しないようにね」

「それはお互い様だ。アイツらは俺らの組織の中でも別次元の強さを誇る。その実力は恐らくアンタと同等か、それ以上かってところだ」

「なら幻想卿の子達で立ち向かえば・・・って訳にもいかないんだよね?」

「アイツらの戦闘スキルは特筆すべきものがある。戦い慣れしていない幻想卿の奴らで立ち向かえるか・・・」

「一部の妖怪ならいけそうだけどね」

「まぁそういうことだ。気を付けろ」

そこで無線が切れた。

ヒューマノイドはスライドヘッドホンを無線モードから音楽モードに切り替えると、萃香の肩を叩いた。

萃香はそれに気づくと手を降ろし、ヒューマノイドの方に振り向いた。

「もう大丈夫なのかい?」

「ああ」

「どんな話をしてたんだい?せめてそれだけは聞かせてくれるといいんだけど」

「まぁ、相手の組織に内通者がいてね。そいつと連絡を取ってたんだ」

「へぇ・・・あんたも姑息な手段を使うもんだね・・・」

「姑息・・・か・・・」

ヒューマノイドは少し空を見上げた。すっかり夕暮れ時である。

「それが君達妖怪と人間の違いなのかもね。妖怪は常に毎日に余裕を持っているが、人間は自ら多忙になっている。私も余裕がないからこういう手段を使わざるを得ないのか・・・」

「なら一度、一つの場所に身を留めておくのはどうかな?話によれば色んな世界を旅してたらしいし、一度落ち着ける場所を探してみるのもいいかもよ?」

「それもいいかもしれないな・・・」

(ギルドにいたころは色んな事があったけど、確かに気楽に暮らせていたしな・・・)

「ま、まずは目の前の事だよ。華扇の修行を終えたらあの鬼神のところに行くんだろ?そこでゆっくり暮らせばいいさ」

「さて、そうはいくかな?向こうに着いたら毎日仕事で忙しそうだ」

「それは残念だね」

「いや、多忙な方が私に合ってるよ。それにアスリートの方なんかは、多忙の中でも常に心の余裕を保っていると聞く。私も心の余裕を意識するとしよう」

「あんた程の人間が、アスリートに学ぶことがあるなんてね」

「何言ってるんだ。分野が違うだけでアスリートもその分野のエキスパートだ。学ぶことが無い訳がない」

「そうなのかい?」

「そういうものさ。君も他種族を見下すんじゃなくて、何か学び取ってみるといい。力とかじゃなく、精神面とかね」

「あんたみたいな精神力は幻想卿じゃいらないと思うけどね」

「それもそうかしれな

その時、大地を揺るがすような轟音が鳴り響いた。

「今のは何だい!」

「博麗神社からか・・・萃香ちゃんはすぐに援護に向かって!私は他の人達を呼ぶ!」

「分かった!」

二人は急いで各々の方向に向かった。