東方修行僧 16
「はぁっ・・・はぁっ・・・。くっ!」
突如現れた別部隊に鈴仙は手を焼いていた。既に数十名の妖怪が負傷している。
そしてアリスまでも戦闘不能になってしまった。
そんな中で、鈴仙はある違和感を覚えていた。
(能力が、効いていない・・・っ!?)
敵部隊の隊長らしき人物。鈴仙は先程から能力を使い視界を眩ませているはずなのに、彼には全くといっていい程効果が現れていないのだ。
「ああ・・・見えない・・・。何も見えないよぉ〜」
いや、正確には能力は少なからず彼の視界に影響を及ぼしているのだ。
それなのに、確実に攻撃は味方側の妖怪達に的中している。その威力も馬鹿にならない。
「くっ・・・!」
「ぎゃーーーーっ!」
それを受け、男は盛大に吹っ飛ぶ。
しかし次の瞬間にはケロッとそた表情で立っている。先程からずっとこの様子なのだ。
どれだけ攻撃を加えても倒れず、どれだけ視界を眩ませても攻撃を当ててきて、どれだけ防御体制を取ろうとも人間とは思えない破壊力で無効にされてしまう。
鈴仙は直感した。
(勝てない・・・っ)
このまま続けても仲間が傷ついていくばかりだ。相手の部隊は、全く損害が出ていないのに。
「一体・・・一体どうすれば!?」
「ほらほら〜立ち止まってると☓しちゃうよ?」
「くっ!」
拳銃を構える少年の姿を見て咄嗟に鈴仙は木の陰に隠れる。
すると、ポケットからヒューマノイドから授けられた例の封筒が出て来た。
(この中に今の状況を打破する何かがありますように・・・っ!)
鈴仙は封筒を開けた。そこにはこう書いてあった。
ーー『迷いの竹林に逃げるように』ーー
その瞬間、鈴仙は自分がこの部隊に選ばれたもう一つの理由を理解した。
永遠亭の住人は、迷いの竹林内に入っても迷わない。しかし他の人間はというと、あそこに入ったら確実に道を見失ってしまう。
鈴仙は、永遠亭の住人である。よって迷いの竹林に入っても迷わないで済む。
鈴仙は木の陰から出て来て、大声で叫んだ。
「全員、負傷者を連れて退散!私について来るように!」
その指示を聞いた瞬間妖怪達は敵との交戦をやめ、各々負傷者を抱え鈴仙の元へ集まる。
鈴仙も、出血で動けないアリスを抱きかかえた。
「逃がさないよぉ〜?皆、いけいけ〜!」
敵兵が背後から追ってきた。それを視認した鈴仙は、能力を使用した。
その瞬間、鈴仙他妖怪達の姿が敵兵の視界から消えた。
鈴仙が波長を操り、姿を見えないようにしたのである。
「っ!?何も見えません!!」
「参ったなぁ〜。でもまぁ僕について来れば大丈夫だよ」
尚も少年は追ってくる。それも正確に鈴仙達を追尾している。
(くそっ!一体何なのよもう!)
敵兵を視認しながら走る鈴仙。
そしてその上には三妖精の姿があった。