東方修行僧 6
何故、こんなことになってしまったのか。私は後悔した。己の弱さを。
朦朧とする意識の中、思うのは過去の事だったーー。
ーー数日前。
「そろそろ修行も佳境に入りましたね」
「やっとですか・・・」
思えば、この修行はとても過酷なものだった。
筋トレをしたり口調を変えたり死と向き合ったり筋トレしたり。
まぁまだ終わっていないのだが。
「やっととは何ですか。貴方がやりたいと言ったのでしょう?」
「まぁそうですけど・・・ここまで扱かれるとは」
「ふふふ。まぁその扱きもこの修行で終わりです。最後に貴方には・・・」
その時だった。
ドォーンと大きな音が鳴ったかと思うと、幻想卿に地響きが迸った。
「っ!?今のは!?」
「もしかしたら異変かもしれません。・・・霊夢が動くから心配無いでしょうけど」
「・・・」
嫌な予感がした。異変に立ち会ったことは無かったが、それでもこれはタダ事では済まされないと。
「一応、様子を見てきます」
「分かりました。無茶はしないで下さい」
直ぐに表へ飛び出した。するとそこには殆どいつもと変わらない幻想卿の姿があったが、一点だけ明らかにいつもと可笑しいところがあった。
「あの光は・・・?」
その一点から時には赤、時には青といったように様々な色の光が連続的に映し出されていた。
よく見てみると偶に弾幕が出ていることが分かる。そしてその光の出所は・・・
「博麗神社の方からか!」
私は急いで飛び立った。
「何だこれは・・・!」
博麗神社についてまず目に付いたのは、ボロボロになってしまった神社の境内の姿だった。
そこから目を移すと、辺り一体に切られた後や穴ぼこが開いていてそこに激しい戦闘が繰り広げられていた事を物語っている。
「一体ここで何が・・・!?」
突然草むらの方から音がした。咄嗟に身構えたが、それ以降何の変化も無かった。
恐る恐る近付いてみると、茂みに隠されるように一人の少女が横たわっていた。
「魔理沙ちゃん!」
「具合はどうだい?」
私はお茶を用意した。「まあまあだぜ」と魔理沙。
あの後急いで魔理沙を華扇の家に連れて帰った。酷い怪我だった。
今は包帯を至る所に巻いて、安静にしている。
「だいぶ落ち着いたようだね」
「何があったか話してくれませんか?」
いつの間にか華扇の姿があった。心配性なのだろうか?
「あ、ああ。今話す・・・」
それは突然現れたと言う。
いきなり結界を越えて来たかと思うと、神社にいた魔理沙ちゃんと霊夢ちゃんに襲い掛かった。
圧倒的な強さで二人を翻弄し、適わないと見た霊夢ちゃんは魔理沙を適当な場所に吹っ飛ばした。
その勢いで魔理沙は意識を失い、私が来るまで起きなかったのだという。
そして霊夢は行方不明になっていた。
「私の予想では、多分奴に連れ去られたんだと思うぜ・・・」
「確かに、そう考えるのが妥当だね」
「霊夢と魔理沙を簡単にあしらえるほどの実力者・・・恐らく外の人間ですね」
「くそっ!一体何が目的で霊夢を!」
「・・・幻想卿を支配するとかそういう目的なら、まず巫女を無力化させるだろから、合点がいくかもね」
「私、奴を探してくるぜ!」
「魔理沙!そんな危険な!」
「待って魔理沙ちゃん。何の情報も無しに敵地に行くのは危険だ。それに、敵が何処にいるかなんてどうせ分かってないんだろう?・・・こういう時は天狗に情報を聞くのがいいんじゃないか?」
「ヒューマノイド、貴方まで!」
「霊夢ちゃんが居なくなった以上、代わりの誰かが異変を解決させなくちゃいけない。それに相手が外の世界の人間で相当な実力者だとすると、別の世界から来た戦争慣れしてる奴らであるといえる。そんな敵にこの平穏な幻想卿の住人が適うとは思わない。・・・つまり、私が出なきゃいけない」
「・・・分かりました。幻想卿を頼みましたよ。私も出来る限りのサポートはします」
「ありがとうございます」
私と魔理沙は天狗の住処へ向かった。
「さて魔理沙ちゃん。戦争慣れしてる私から言わせて貰うと、次に相手は情報伝達手段を奪ってくると考えられるつまり急がないと私達が到着する前に天狗達の所も制圧されてしまう。幸いここから天狗の所へは遠くないから、上手くいけば敵に備えられるだろう」
「そうか、なら安心だ」
「しかし・・・相手がもし神社を襲った奴以外にも複数いたとなると話は別だ。なるべく急いだほうがいい。・・・最悪、彼女達の手を借りなければならないな」
飛行速度を上げ、天狗のところに急いだ。