yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

東方修行僧 2

ここは人間の里。

幻想卿にいる数少ない「人間」が集まる集落だ。

ここは如何なる妖怪も襲う事が禁じられている。その為、妖怪が多いこの世界において唯一人間が安心して暮らせる場所だ。

「・・・って、ここで何をするんですか」

「ここでは貴方に「怒」の感情を教えます」

「怒?こんな場所で?」

「では試しにその道を歩いてください」

そういって指差したのは、人間の里では飽きる程に見る何の変哲も無い歩道だった。

一体何をするのか。疑問を拭えないまま言われたとおり指定された道を歩く。

暫く歩くと、曲がり角が見えた。気にせず進む。

・・・しかし、突如ボンッと重い衝撃が左肩を襲った。

何事かとその方向を向くと、歳50ばかりの男が不機嫌そうな顔でこちらを睨んでいる。

「あ、すいません」

深々と頭を下げ、相手の様子を窺う。

まぁ普通だったらここまでしたら大丈夫だろと顔を上げたが、そこに映っていたのは更に不機嫌そうな顔をした男が立っていた。

「しっかり前を見て歩かんかね!」

「は、はぁ・・・」

横からくるものをどうやって前を向きながら避けるんだ。いや私は出来るけど。

「しかも何だその耳に付けている物。そんなものを付けているから人が来ても気付かないんだろ!」

このまま言いたい放題されるのも癇に障るので、反論することにした。

「あのですね、こちらだって死角からいきなり人が来てぶつかってしまってびっくりしてるんですよ。それは貴方から見れば俺の不注意かもしれませんけど、こちらから見れば貴方の不注意とも受け取れるんですよ?」

「何だお前、俺のせいにしたいのか!?」

「そんなことありませんよ。貴方にとっても突然のことだったから、その事を考えて謝ったじゃないですか。一歩引き下がって」

「じゃあお前自身が自分が悪いと認めたんじゃないか!それなのに何だその言い草は!」

これだから、人間は困る。

自分の罪を認めようとせず、逃げ惑い、楽な方へと流れていく。

そんな人間は前へ進む事が出来ない。人間は地球を支配してから、全く持って腐った生命体となってしまった。

まぁ勿論、そういった教養がしっかりなっている者は例外だが。

結局その後口論が続き、煮え切らないまま別れた。

「全く自分勝手な人だな・・・」

むかむかした気持ちで前を向くと、前方に腕組みをした華扇の姿があった。

いつ追い抜かされたのだろう?いや、恐らく口論に夢中で気付かなかったのだろう。

その方向に進むと、あちら側もこちらに気付いたようだ。

「どうです?良い散歩となりましたか?」

「お陰様で」

そう言いつつ、わざとらしく嫌な顔をして見せた。

「成る程、良くなかったのですね」

「ちょっとそこら辺で男と口論になりまして・・・」

「ええ。ばれないように見てましたよ」

やはり口論の最中に追い抜かしたのか。

「やっぱり見てたんですか」

「随分声を荒げていたようですけど、何があったんですか?」

「曲がり角でぶつかってしまって、直ぐに謝ったんですけど向こうが色々いちゃもんをつけてきてですね」

「それで口論、と」

華扇は少しの間考える仕草をすると、重い口を開いた。

「最初に謝ったのは評価できますね。しかし、それで相手が何を言おうと腹を立ててはいけませんね」

「・・・いや、随分な注文ですね」

「それぐらいは出来ないといけません。これは流石に私でも分かります。どんなことがあってもカッとなってしまうと直ぐに心が乱れ、自分を保てなくなってしまいます。怒りは、たまには自分の力を引き上げてくれますが暴走してしまうと恐ろしいものになります。しっかりコントロール出来るようにならないといけません」

「は、はぁ・・・」

「ということで、貴方にはこれから紳士的な態度というものを学んでもらいます」

「え~!?」

「はい駄目。腕立て伏せ100回!」

「何で俺がこんな事・・・」

「「俺」など汚い言葉は禁止です!これからは「私」と言いなさい!プラス100回!」

「(今まで体を鍛えまくっておいて良かった・・・)」