World travel episode 2 ~クトゥルフ神話編 part 22~
それからどれぐらいの時間が経ったろうか。
途中で発狂でもしてしまったのか、あまり思い出せない。
ただ一つ言えることは・・・
「優綺ちゃん・・・岳大君・・・」
俺は何も守れなかった、ということだ。
「水谷君・・・麗香ちゃん・・・」
どんどん胸の内が熱くなっていく、この感覚は何千年ぶりだろうか。
「那奈ちゃん・・・元村・・・」
耐えられなくて、泣いてしまった。
・・・そしていつしかそれは、大切な人の「死」への愁いから、それらを守れなかった後悔へと変わっていった。
「何で・・・守れなかったんだ・・・『あの日』から・・・努力してきた筈なのに!!」
俺は地面を叩きつけ、突っ伏した。
「結局・・・何も変わってないじゃないか!!俺は・・・俺は!!」
体の水分が無くなってしまうんじゃないかというぐらい、泣いた。
辺りはその俺からでた涙でびしょ濡れだった。
「うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
大きな声を出し、何度も地面を殴った。
そしてその内自分が生きてることに罪悪感を感じた。
何故「自分だけ」生き延びてるのか、
何故自分は今まで性懲りもなく生きてきたのか、
何故アザトースは俺だけ生かしたのか、
何度も何度も、自分を責めた。
そして責め続けた。
そして出た答えは、
「もう俺なんて要らない」
自殺だった。
「何も守れない俺なんて、いらない」
能力で鋭利なものを作り、
「・・・」
そのまま左手首に振り下ろした。
「何でだよ・・・」
しかしそれは直前で止まってしまった。
「この期に及んで『死』を恐れてんのか俺・・・!」
しかし何度も振り下ろしても直前で止まってしまう。
「くそっ・・・くそっ・・・」
「死」すら受け入れられない自分に腹がたってきた。
・・・どれほどやっていたのだろうか。
次第に飽きて、やめてしまった。
「・・・」
何も出来ない自分へのわだかまりで、変な気分だった。
「俺って・・・今何の為に生きてるんだろ・・・
俺はこれから・・・何をして・・・」
「なら、私の所に来てみる?」
突然したその声にすぐさま起き上がり、身構えた。
「あら、可愛い子♪」
「・・・勧誘なら間に合ってるぜ。俺はもう所属してるところがある」
「違うわよ。私の世界に来ないかと言っているの」
「・・・」
「さっきまでの事、見ていたわ」
「!・・・いつぐらいから?」
「貴方とアザトースが戦ってるあたりから。あまりにも劣勢だったから助けちゃったわ」
「・・・そうか、君が・・・有難う」
「いえ・・・友達は助けられなかったわ。もう遅かった・・・」
「それはいい。元はと言えば俺の責任だ。それより・・・どうやって助けた?」
「?」
「あんなんから俺を助けるなんてほぼ不可能な筈だ」
「ああ・・・確かにアザトースを見たときはちょっと来たわ。でもね・・・」
そういうと、その女性は何やら空間の狭間らしきものを作り出した。
「!それは!?」
「『スキマ』と言うの。私はこのスキマを操る妖怪、スキマ妖怪よ」
「・・・君は、一体・・・」
「私?私は・・・
『八雲 紫』、よろしくね」