yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

World Travel episode 1 〜家庭教師編 part10〜

私の全力を込めた攻撃は、相手に命中していた。

普通なら倒れてしまうくらいの威力だった。

なのに。

「・・・」

相手は物一つ言わず、何事もなかったように平然と立っていた。

「なん・・・で・・・」

心臓の鼓動が早まる。

「確かに攻撃は当たった筈・・・なのに何でっ!!」

足が震える。

 

 

 

・・・その時私は生まれて初めて真の恐怖を味わった。

 

 

 

相手は頬に当てられた拳を引っ張り、私の体勢を崩す。

私は恐怖に怯えて何も出来ない。

ドガッ!!

「ぐ・・・ぽぉっ!?」

相手はすかさず膝蹴りをいれた。

最初に受け止めた拳とは比べ物にならないほどの痛みが襲う。

相手は腹を抱えて悶えている私に容赦無く拳を振るわせた。

「うっ・・・あぁっ!!」

私はまた後ろに吹っ飛んだ。

顔が痛む。

今まで感じたことがないほどに。

コツ・・・コツ・・・相手はゆっくり、距離を詰めてくる。

恐怖と痛みに支配されている私は、何も出来ないまま蹲っている。

恐らく体は震えているだろう。

相手の足音が止まった。

それはすなわち、攻撃の射程距離内に入ったことになる。

視界の片隅で、私は相手を捉えた。

相手はこちらを見下ろしたまま、拳を上に上げる。

恐らく次顔面に拳を食らったら、骨はバラバラになるだろう。

もしかしたら死ぬかもしれない。

「・・・ッッ!!!」

そう考えた途端、先程とが段違いの恐怖が襲った。

(やだ・・・死にたくない・・・!)

相手は一切表情を変えない。

(いや・・・来ないで・・・!)

相手は問答無用に拳を振り下ろした。

(いや・・・いや・・・!)

「イヤァァァァァァァアッッッ!!!」

 

 

 

 

 

しばらくして、私は我に返った。

何かおかしい。

襲ってくるはずの痛みが、いっこうに来ない。

(何で・・・?)

そう思い、私は顔をあげた。

そこには、

 

 

 

鋭い目つきでさっきまで私が戦ってた相手を睨みつけている一人の少年がいた。

私はその姿に見覚えがあった。

数カ月前までただの意気地なしだった弱虫。

しかし、ある人との出会いがきっかけで急成長した、一国の王子。

そう。フェイ・ミューグラードだ。

「もういいだろ。勝敗は決した。コイツを痛めつける理由なんて無いだろ」

落ち着いた声でフェイはそう言い放った。

左手には私に向けられる筈だったエルミリオの拳がある。

「・・・」

エルミリオは静かに反転し、会場を後にした。

「・・・」

フェイは静かにその姿を見据えた。

「バカ・・・」

気が付くと私は勝手に声をあげていた。

「まだ戦いは終わってなかったのに・・・」

情けなく震えた声だ。

フェイはそんな声に振り返らず、何処かを見つめていた。

「まだ私は戦えた!!なのに・・・なのになんで勝手に勝負を決め」

「いい加減にしろ!!」

私の声に被せる形で、フェイは怒鳴った。

「お前がこんな所で死んでどうする!?守るべきものも守れねぇだろうが!!」

初めてフェイに怒鳴られた。

その声は強く、優しかった。

「守るっていうのはソイツの為に死ぬことじゃない!!ソイツの為に必死で戦って、勝って、また笑顔で帰って来てやることじゃねぇのか!!」

フェイの言葉は一つ一つ胸に響いた。

いつのまにか私なんかよりずっと強い人間になっている。

「お前のその考えじゃ誰一人守れやしねぇ!!だから・・・」

そういうと彼はやっと振り向いた。

そしてニコッと微笑み、

「お前が誰かを守れるようになるまで、俺がお前を守ってやるよ」

やさしく、そう告げた。

「うっ・・・うっ・・・」

いつの間にか私は涙を流していた。

フェイはそんなことはお構いなしに、優しく、そうっと、私の体を抱きしめた。

「うわああぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

私は暫くその場で泣き続けた。