yahhoi's novel.

私ことやっほいの小説置場です。オリジナル小説に加えレギオンズの皆様との小説、堕華さんとの提携小説や東方二次創作等を書いていきます。

World Travel episode 1 〜家庭教師編 part5〜

剣と剣がぶつかり合う、甲高い音が鳴り響く。

ここは城の地下闘技場。

そして、たった今俺はこの国の次期王子、フェイの相手をしている。

「っおおおぉぉぉぉぉぉお!!」

激しい雄叫びと共にフェイが切りかかってくる。

「甘い甘い」

俺は体をひらりと曲げ難なくかわす。

能力は使っていない。使ったらフェイの練習にならない。

「確かに人は声を出すと本来よりグンと力が出る。でも力みすぎて剣筋がブレブレだ」

次々と振りかかる剣の間をすり抜け、徐々に間合いを詰める。

「っ!!」

フェイは剣を振り下ろす。

俺はその剣を踏み台にしフェイの背後へ回る。

しかし、フェイはそのまま回転し、勢いのまま剣を振る。

「おっと」

俺は膝を曲げて上体を逸らし、イナバウアーのような形でギリギリその剣を避ける。

「今の攻撃は良かったよ。俺じゃなかったら避けれなかった。上達したな」

「それでもまだ・・・足りないっっ!!」

賞賛の言葉を浴びせられても、フェイはまだ向上心を消さない。

「いいよいいよ・・・やっと戦う目になってきたよ・・・!」

俺もそれに呼応し闘志を沸かせる。

「スマン二人共、ちょっといいか?」

両者の闘志が上がり始めたという時に、アントが現れた。

「ったく・・・今いいとこだったんだけど?」

「いや・・・どうしても早めに耳に入れておきたいことがあってな・・・ついてきてくれないか?」

「だとよフェイ・・・どうする?」

「・・・行く」

フェイが行くというので、俺もそれに賛同した。

 

 

 

 

 

アントにつれられてきたのは、普通の家庭で言うリビングのような場所だった。

ソファーもフカフカで、なおかつ一般家庭の温かみも感じる、快適な部屋だった。

「んで?耳に入れておきたいことって?」

俺はアントに問いかける。

「それはだな・・・」

アントはそう言うと、クルリと向きを変えて、フェイの方を向いた。

「フェイ。お前はもう12歳。そろそろ王位継承をしてもいい頃だ」

「12歳?速すぎやしねぇか?」

俺は疑問を投げかける。

「そう言えば説明してなかったな。この国の王家は代々12歳あたりで王位継承の儀式を行うんだ。ただし、先代の王はそのまま隠居するのではなく、王が成人するまで政治を助ける、関白のような位につくんだ」

「成程。でも12歳じゃ結婚出来なくね?継承の洞窟に入って真なる冠をとるには、この世で最も愛するものが必要じゃなかったのか?」

「それについては、実際には真なる冠をとる時点では結ばれたと言えない。その後成人した時にとった時と変わらず愛した人と一緒に真なる冠を納めた時に、結婚が成立するんだ」

横でフェイが顔を顰めている。「どうしたんだ?」と聞くと、

「とってから納めるまでの時間で別れちゃったらやり直しじゃん」

と答えた。

確かにそうだな。

「んで、本題に入るが、」

アントが話を切り出した。

「お前には未だ愛し合える存在がいない。つまり真なる冠をとってこれないんだ。そこで・・・」

アントはひと呼吸置き、

「お前、武闘会に出てみないか?」

そう告げた。

「武闘会・・・全世界の強者が集まるアレか・・・」

「その大会に、アイミア王女も出席するらしい。そこで彼女にアピールしたらどうかと思うんだが」

アイミアか・・・確か武術も達者で、毎日挑戦状を受け、撃破してるとか。

俺は横を見た。フェイがどんな反応をしているか気になったからだ。

「・・・」

フェイは静かにアントの方を見ていた。瞳の奥には闘志が宿っている。少し安心した。

「どうするフェイ?」

アントが問いかける。

「どうするったって、これが彼女との距離をつめる最後のチャンスなんだろ?」

彼は息を吸う。そして、

「やるしかないじゃないか!」

元気いっぱいに、そして力強く、小さな戦士は答えた。

こうして、俺とフェイの猛特訓の日々は始まった。